研究実績の概要 |
本研究の目的は,quiet eye (QE)トレーニングと反復把握法を組み合わせ,アスリートの「あがり」を防止する簡便かつ効果的な対処法を確立することであった.QEは目標物に視線を固定した時点から動作開始までの時間を指し,QE時間を延長させるトレーニングがあがり防止に有効視されている.反復把握法は,左手によるボール把握によって右半球を選択的に賦活させ,パフォーマンス低下を防止する.本研究では,バスケットボールのフリースローを課題として,あがり防止効果を実験的に検証した.バスケットボール選手を3群に振り分けた(介入なし群,QE群,QE+把握群).介入前後にプレテスト,ポストテスト,プレッシャーテストを実施した(フリースロー18試行).QEトレーニング(12試行/ブロック×3ブロック)は合計9回実施した.プレッシャーテストでは,パフォーマンスが評価される状況を設定した.実験の結果,トレーニング効果は群間で異なる傾向であった(F(2, 15)=2.95, p=.083).QE時間はテスト間で差のある傾向であった(F(2, 30)=2.99, p=.065).さらに群とテストの交互作用(F(4, 30)=2.35, p=.076)が有意傾向であったため,ボンフェローニ法適用による多重比較を行った結果,プレッシャーテストではQE+把握群がQE群よりもQE時間を延長させた(p<.05).またQE+把握群のQE時間は,プレテストよりもプレッシャーテストで有意に長かった(p<.05).本実験の結果は,QE時間を延長させるにはQEトレーニングを単独で実施するよりも,左手によるボール把握と共に実施したほうが効果的であることを示唆している.一方,パフォーマンスにはプレッシャーに伴う低下は認められなかった.今後は実験参加者数を増やしてさらに検証する必要がある.
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