研究実績の概要 |
最終年度である29年度では, 運動野興奮性を高めることのできるTMS刺激応用が,神経活性を高めて最大筋力を増強できるかに注目した.この応用は事前の右手首への正中神経への電気刺激と運動野へのTMSを組合せた二連発連合刺激法(paired associative stimulation; PAS)によるものである. 実験方法として,被験者は6名の健康な大学生で自主的に実験参加した. PAS刺激とトレーニングによる運動野内皮質興奮性は二連発TMSによる短間隔運動野皮質内抑制(SICI)および短間隔運動野皮質内促通(SICF)で評価した.左手親指と人差し指の把持動作による最大筋力トレーニングは,PAS刺激を15分間事前に入れた後,以前のトレーニングと同様な期間(1日おきに4回),1回のトレーニングは1セット(2秒間最大筋力発揮,1分間休息3回)を5分間の休息を挟んで4セット設定した.実験手順の中で, SICIおよびSICFはコントロール値,PAS刺激で5秒に1回で15分間刺激した後, 直後および10分後,引き続き,トレーニング直後,5分,10分,15分の時間で測定した. その結果,4日間の最大筋力は12.5,12.8,12.9,13.2kg(5.6%増)とわずかに向上したが,以前の刺激なしのトレーニングの最大筋力増6.3%とほとんど変わらなかった.SICFはPAS刺激10分後にコントロール値と比べやや増加したが,筋力トレーニング15分後には戻る傾向にあった. SICIもSICFと同様な変化を示した.トレーニングが進むにつれて運動野興奮性が変化する傾向が見られなかった. これらのことから,事前の受動的なPAS刺激による運動野興奮性増大は最大筋力トレーニングによる筋力増強を引き起こさなかった.と同時に運動野皮質内興奮性の変化も起こさないことが示唆された.
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