研究課題/領域番号 |
15K12666
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
増田 和実 金沢大学, 人間科学系, 教授 (50323283)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 筋細胞 / 代謝 / ミトコンドリア / 基質 / シグナル |
研究実績の概要 |
栄養基質(例:ポリフェノール)によってミトコンドリアの生合成が誘発されることや基質摂取と運動との併用が、本来、運動が引き起こすトレーニング効果を増幅させることがある。こうした事象は基質依存的に活性化するシグナルカスケードの存在を推測させるものの、基質によって賦活されるシグナル分子の同定や、増えたミトコンドリアの機能評価を含めた体系的な研究が進んでいない。 平成27年度の研究内容を継続しつつ、CurLによって賦活されるシグナル系の詳細について検証した。CurLはDMSOに溶解し、ラット腹腔内へ注入した(投与期間=4週間)。最終日の投与から2時間後に骨格筋や心筋、肝臓の各組織を摘出した。筋細胞内基質(NADHの酸化還元状態)や関連するタンパク質のリン酸化やアセチル化状態を分光光学的手法やウエスタンブロット法などによって検証した。細胞内の代謝性酸化還元比を表す[NDA+]/[NADH]はCurL投与によって上昇した。このことがSIRT1の発現量(核内)の上昇を引き起こしていると考えられる。また、CurL投与によってSirt1の下流にあるPGC-1aの脱アセチル化も生じていた。これらの結果はCurLがSirt1経路の活性化を通じてミトコンドリアの生合成を亢進させている可能性を示唆している。 また、ミトコンドリアの生合成が誘発される背景として、CurLが骨格筋に対して直接的に作用しているのか否かを検証する必要がある。そこで、CurLを投与したラットの筋組織を用いて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって摘出した骨格筋細胞質へのCurLの貯留量を分析した。解析の結果、筋サンプル内にCurLが検出できなかった。このことはCurLが細胞内へ吸収されにくいものであることを示唆するが、サンプルや解析条件を調整し、再分析する必要があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年では概ね計画に沿ってin vivoモデルにてCurLによるミトコンドリア生合成に関する細胞内シグナル分子(代謝性酸化還元比やタンパク質発現量や活性化状態)を検証することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27-28年度の研究内容を継続しつつ、これまでの検証から得られたミトコンドリア、つまり CurLあるいは運動トレーニングによって増加したミトコンドリアの呼吸機能を評価する。ミトコンドリアの呼吸機能評価には、高感度ミトコンドリア呼吸測定機を用いる。細胞から単離したミトコンドリア、あるいは膜透過処理した筋細胞で検証する。まず、呼吸機能評価のための測定プロトコールの確立を図る。添加基質/阻害剤によって呼吸鎖複合体毎に機能評価する。評価系の確立後にCurL投与やeTRしたミトコンドリアを用いて呼吸機能評価を実施する。また、細胞内にCurLが取り込まれていなかったことを再検討しながら、CurLのような脂溶性基質が筋細胞のどこに作用することによってミトコンドリア生合成を亢進させているのかを明らかにする必要がある。AMPKやSirt1の上流のタンパク質や代謝産物に注目しながら、CurLが影響を及ぼす標的分子を探る。 最終的に3カ年の成果を取りまとめ、成果報告を行う。
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