研究課題
本研究では、骨格筋の性質の決定に、遺伝子配列の変化を伴わないDNAメチル化によるエピジェネティックな遺伝子発現制御が関与する可能性の検証を目指した。転写制御因子PGC1αの過剰発現により骨格筋の顕著な赤筋化が生じ、持久運動能力が向上する。マイクロアレイによる網羅的発現解析の結果、TCA回路、酸化的リン酸化、脂肪酸代謝、BCAA代謝などがPGC1αによって制御されることが判明した。一方、FOXO1の過剰発現マウスでは赤筋遺伝子の発現低下が観察される。このマウスの骨格筋に関して、メチル化感受性酵素HpaIIを利用した網羅的なDNAメチル化解析法であるMIAMI法を用いて、ゲノムワイドなDNAメチル化変化を解析したところ、顕著なDNAメチル化変化は観察されなかった。MIAMI法に加えて、メチル化シトシン抗体による免疫沈降と独自に設計したプロモーターアレイを組み合わせて、遺伝子のプロモーター部分のメチル化変化を網羅的に解析する手法を今回確立することができた。PGC1α過剰発現マウスと野生型コントロールマウスの骨格筋を比較すると、一群の遺伝子プロモーターのメチル化変化が観察された。これは赤筋化によるDNAメチル化変化を示唆するものである。今後、これらの具体的な解析を進めることにより、持久的運動によるエピジェネティクス変化の全貌が明らかになることが期待される。さらに核内受容体を介したDNA脱メチル化のメカニズム解析として骨格筋代謝で重要な核内受容体であるPPARとDNA脱メチル化関連因子類がタンパク質相互作用する可能性を検討したところPPARとTDGおよびDnmt3aの相互作用が観察された。これらの結果は、核内受容体とDNAメチル化・脱メチル化関連因子類が複合体を形成して作用することを示唆している。さらなる詳細な分子機序の解明が必要である。
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