研究課題/領域番号 |
15K12670
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研究機関 | 石巻専修大学 |
研究代表者 |
山内 武巳 石巻専修大学, 人間学部, 准教授 (60296027)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 低酸素 / 睡眠 / 高所 / 無呼吸 / 呼吸性アルカローシス / 動脈血酸素飽和度 |
研究実績の概要 |
高所トレーニングは高いトレーニング効果を得られる反面、高所で眠ること自体が疲労回復の遅延などを生じさせてオーバートレーニングを引き起こす可能性がある。高所、つまり低酸素環境下における睡眠の特徴は中途覚醒の増加や徐波睡眠量の減少による睡眠の質の低下であり、その原因として睡眠時中枢性無呼吸があげられる。 本研究では低酸素環境下の睡眠の質を悪化させる原因として考えられる動脈血二酸化炭素分圧(終末呼気二酸化炭素分圧から推定)の低下を平地の正常範囲内に調整し、無呼吸を減少させる新たな低酸素トレーニング「低酸素二酸化炭素負荷法」を開発し、その生理学的基礎データを提供することを目的とする。 平成27年度の第一目的は低酸素環境下の睡眠中の終末呼気二酸化炭素濃度を測定し、正常睡眠条件と比較することであった。実験は就寝起床の時間を一定に整える生活調整期間を4日間設けたのち、正常睡眠条件を2夜、低酸素環境睡眠条件を1夜の連続3夜の終夜睡眠実験を行った。低酸素環境は海抜高度2500mに設定した。測定項目は睡眠ポリグラフ検査、動脈血酸素飽和度、胸腹部の呼吸運動、終末呼気二酸化炭素分圧とした。 正常睡眠条件では対象者に対して睡眠実験環境に対する違和感を可能な限り軽減できるように正常睡眠条件を2夜設けた。実験条件全てにおいて起床時の睡眠内省をOSA睡眠調査票から評価し、正常睡眠条件では通常の睡眠と同程度の睡眠感が得られていることを確認した。 低酸素環境の睡眠条件は正常睡眠条件と比較して睡眠中の動脈血酸素飽和度と終末呼気二酸化炭素分圧は低下していたことから海抜高度2500mに相当する低酸素環境下の睡眠は呼吸性アルカローシスを呈することを実験的に示すことができた。また海抜高度2500mでの睡眠中の無呼吸の頻度は正常睡眠条件より高いことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究倫理委員会による承認が8月に得られ、大学生に対する被験者募集を実施するために夏休み明けの9月後半から被験者募集を開始した。実験は11月中旬より開始し、予定していた実験は2月末にほぼ終了することができた。 低酸素睡眠条件において確認された無呼吸の頻度は予想より少なかった。これは低酸素耐性の個人間差によるものと推測している。 睡眠時の無呼吸判定は通常鼻腔と口唇からの気流変化、胸腹部の呼吸運動、動脈血酸素飽和度を測定して判定する。本研究において最重要な終末呼気二酸化炭素分圧測定のセンサーも鼻・口唇の気流を利用して測定するため、無呼吸判定に利用する鼻腔・口唇のセンサーと設置位置が物理的に干渉し、測定値が安定しなかった。そこで 無呼吸判定は終末呼気二酸化炭素分圧の変化曲線と胸腹部の呼吸運動と動脈血酸素飽和度から行った。 27年度の実験スケジュールは睡眠時の被験者に対して3泊4日の日程拘束が必要であり、被験者の日程調節は難航し、また検者にとって実験の身体的負担が予想していた以上に大きかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の計画では被験者1名に対して終夜睡眠実験として4泊5日の日程拘束が必要となり、被験者との日程調節の難しさ、検者の身体的負担の大きさが平成27年度よりも増すことが予想される。平成27年度に被験者として参加した対象者が平成28年度にも被験者として参加してもらえる場合は時間的拘束、身体的負担を考慮して両年で重複される実験条件のうち、減らすことが可能な試技条件があるのか検討を要する。
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次年度使用額が生じた理由 |
オイルフリーコンプレッサーの購入金額が購入予定価格より安値だったため。
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次年度使用額の使用計画 |
低酸素環境の睡眠室の二酸化炭素濃度調節に必要な機器の購入に充当させる予定。
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