研究課題/領域番号 |
15K12672
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
一之瀬 真志 明治大学, 経営学部, 専任准教授 (10551476)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | スポーツ生理学 / 循環調節 / 血圧 / 動脈圧受容器反射 / 末梢反射 |
研究実績の概要 |
運動中には,運動強度の高まりに伴い動脈血圧が上昇する.この血圧上昇は,活動する筋肉への血流量を増加させるとともに,脳や心臓など生体機能維持に不可欠な臓器への血流を維持・増加することに貢献する.しかし,過度の血圧上昇は,脳血管障害や心臓突然死の原因ともなる.したがって,運動中に血圧が適正な水準に保たれることは,運動の安全性と高い運動パフォーマンス発揮の両方に大変重要である.動脈圧受容器反射は,運動中に動脈血圧を調節する主要なメカニズムである.しかし,動脈圧受容器反射のうち,大動脈弓圧受容器を介した血圧調節については不明な点が多く残されている.平成28年度では,昨年度から開発を進めている実験モデルを用いて,安静状態における大動脈弓圧受容器反射の働きを検討した. 被験者(7名)の両大腿部に取り付けたカフを収縮期血圧以上の圧力で4分間膨張し,下肢を完全に阻血した.その後,阻血を解除すると,代謝性血管拡張により下肢へ血液が急激に流入することで,急性に動脈血圧が低下した.この動脈血圧低下は,頸動脈洞と大動脈弓の両方の圧受容器により感知され,反射性に心拍数や交感神経活動の増加,末梢血管収縮が起こり血圧は次第に回復していく.急性の動脈血圧低下と同時に,ネックチャンバーを用いて頸部に-30mmHgの陰圧を負荷した.頸部陰圧負荷により頸動脈洞部位の血管経壁圧の低下を防ぐことで,頸動脈洞圧受容器反射の働きを抑制することが出来ると考えられる.コントロール条件(頸部陰圧負荷なし)と頸部陰圧負荷条件では,大腿阻血解除後の動脈血圧低下の程度に差はなかった.また,圧反射性の心拍数増加反応にも条件間の有意差はみられなかった.これらの結果から,安静状態における急性の動脈血圧低下に対する心拍数増加反応には,大動脈弓圧受容器反射が主要な役割を果たすことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究計画は,大きな変更や問題がなく進めることが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は,平成27年度から平成29年度までの3年計画を予定している.平成29年度においては,平成27年度と28年度の研究結果を踏まえて,運動時における大動脈弓圧受容器反射の働きを検討する予定である.現時点では,平成29年度の研究計画を進めるうえで大きな問題はみあたらない.
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次年度使用額が生じた理由 |
学会活動のための旅費等に所属機関からの補助金を利用することが出来た.また,人件費・謝金,印刷,コピー費用などの支出が当初計画よりも少額であった.
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は,研究成果発表のための学会参加や論文発表を積極的に行う予定であり,このための旅費等として使用することを計画している.
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