研究課題
運動中には,運動強度の高まりに伴い動脈血圧が上昇する.この血圧上昇は,活動筋への血流量を増加させるとともに,脳や心臓など生体機能維持に不可欠な臓器への血流を維持・増加することに貢献する.しかし,過度の血圧上昇は,脳血管障害や心臓突然死の原因ともなる.したがって,運動中に血圧が適正な水準に保たれることは,運動の安全性と高い運動パフォーマンス発揮の両方に大変重要である.動脈圧受容器反射は,運動中に動脈血圧を調節する主要なメカニズムである.しかし,動脈圧受容器反射のうち,大動脈弓圧受容器を介した血圧調節については不明な点が多く残されている.平成29年度では,運動時における大動脈弓圧受容器反射の働きを,本研究課題において開発を進めている実験モデルを用いて検討した.被験者(7名)の両大腿部に取り付けたカフを収縮期血圧以上の圧力で4分間膨張し,下肢を完全に阻血した.被験者は,阻血解除の1分前から2分間の動的掌握運動を行った.運動中には,動脈血圧と心拍数が安静水準から有意に上昇した.阻血を解除すると,下肢へ血液が急激に流入することで,急性に動脈血圧が低下した.この動脈血圧低下は,頸動脈洞と大動脈弓の両方の圧受容器により感知され,反射性に心拍数や交感神経活動の増加,末梢血管収縮が起こり血圧は次第に回復していく.急性の動脈血圧低下と同時に,ネックチャンバーを用いて頸部に-30mmHgの陰圧を負荷した.これにより頸動脈洞部位の血管経壁圧の低下を防ぎ,頸動脈洞圧受容器反射の働きを抑制することが出来ると考えられる.コントロール条件(頸部陰圧負荷なし)と頸部陰圧負荷条件では,阻血解除後の動脈血圧低下および圧反射性の心拍数増加反応に有意差はみられなかった.これらの結果から,動的掌握運動時における急性の動脈血圧低下に対する心拍数増加反応には,大動脈弓圧受容器反射が大きく関与することが示唆された.
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