研究課題
骨格筋は身体活動や運動を可能とする臓器であり、また、全身の代謝調節にも重要な役割を果たす。骨格筋量を多く保つことで健康状態がよくなり、疾病の予防にもつながることが明らかとなってきており、骨格筋は創薬のターゲットとして注目されている。また、骨格筋を標的に創薬研究を行う場合、ヒトと動物の細胞では薬剤に対する感受性や応答性が異なることがあり得るため、ヒト由来の細胞を用いることが理想的である。本研究では、ヒト骨格筋幹細胞を免疫不全マウスに移植することにより「ヒト骨格筋を持つマウス」の作製に取り組む。昨年度、新たな筋系譜マーカーとしてCD82を発見した。骨格筋幹細胞におけるCD82の発現はこれまで報告がないため、その機能解析に取り組んだ。RNAi法によりヒト骨格筋幹細胞においてCD82をノックダウンしたところ、増殖が低下し、分化が異常に亢進した。そのメカニズムを調べるため、Pax7、MyoD、myogeninの発現を調べた。その結果、CD82のノックダウンによってPax7の発現が低下し、MyoDとmyogeninの発現が顕著に増加していた。さらに、CD82のノックダウンによってp38の活性化が引き起こされることを突き止め、p38の阻害剤によりCD82のノックダウンで上昇するMyoDとmyogeninの発現が抑制された。これらから、CD82はヒト骨格筋幹細胞の未分化性維持に機能しており、その維持機構としては少なくともp38抑制による筋分化制御因子の抑制を介していると考えられた。CD82は未分化で高品質なヒト骨格筋幹胞のマーカーと考えられたため、CD82を指標に細胞を純化し免疫不全マウスの骨格筋に移植したところ、多くのヒト筋線維が観察された。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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