研究課題
本研究は、ニューロンの重要なエネルギー源である乳酸利用を高めることができれば、中枢性疲労の軽減や認知機能の亢進をもたらすのではないかと仮説をたて、ヒトを対象としてこの仮説を検証することを目的とした。当該年度では、脳内代謝亢進を誘発するような動的運動時の乳酸代謝動態と認知機能の関係性を明らかにすること、及び運動時や運動後の脳内代謝動態を解析することを目的とした。高強度運動を間断的に繰り返し実施する高強度間欠的運動を、1時間の休息を挟んで2回実施すると、1回目の運動と比較して2回目の運動による乳酸産生量が少なくなる。そして、同じ運動強度、実施時間、運動様式の運動であるにもかかわらず、2回目の高強度間欠的運動のように乳酸産生量が少なくなると、亢進した認知機能の持続性が損なわれてしまう。この研究により、運動による認知機能亢進の持続性に、運動誘発性の乳酸産生量が重要な役割を担っている可能性が示されたが(Tsukamoto et al., Physiol Behav 2016)、実際に高強度間欠的運動中ならびに運動後の脳内代謝動態については不明であった。そこで、当該年度は、上記の脳内代謝動態を把握すべく、共同研究機関で、動脈と頸静脈にカテーテルを挿入し、乳酸、グルコース、酸素やモノアミンなどの動静脈較差を算出することにより、運動中のヒト脳内代謝や組織内代謝動態を測定する研究アプローチを推進した。末梢に由来する全身性の乳酸濃度と脳の乳酸取り込みが関連することが明らかとなった。また、脳の乳酸取り込みが減少すると、運動後の実行機能の亢進が持続しないことが明らかとなった。
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Medicine and Science in Sports and Exercise
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