研究課題/領域番号 |
15K12681
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
宮田 浩文 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90190793)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 哺乳類 / 骨格筋細胞 / 低酸素 |
研究実績の概要 |
本研究では、代表的な抗重力筋である外側広筋について、四足歩行する各種の哺乳類と二足歩行するヒトとの比較研究を行い、その解剖学的相違からヒトの骨格筋に生じた特異的な適応変化を明らかにすることを主目的としている。さらに、様々な環境で生息する動物間で骨格筋細胞の構造特性を比較することにより、骨格筋の適応様式に関する基本的知見を得ることを目的としている。本年度は、食虫目およびクジラ偶蹄目の中から、地中・水中に棲息する動物の特徴を調べた。 新規に対象とした哺乳類は、モグラおよびハセイルカであり、それぞれ約20種類の骨格筋をサンプリングした。これまで分析した約30種類の哺乳動物(体重30g~3t)と同様に免疫組織化学染色およびHE染色を施した。各染色画像をもとに、筋線維タイプの分類を行い、各筋線維面積、筋核ドメイン(筋線維面積/筋核数)等を算出した。 その結果、酸素利用が限定される環境(地中・水中)に棲む哺乳動物の骨格筋において、TypeⅠ線維がほとんど存在しないこと、筋線維が全体的に小型であることなどを見出した。これらの結果は、低酸素環境下では酸化的代謝が優位であるTypeⅠ線維が不利になること、毛細血管密度を増加させ酸素蓄積を増加させること、などに起因する適応変化であると推察している。さらに、モグラについては脊髄支配神経細胞の形態特性についても現在検討している。筋線維組成が均一であることから、神経細胞のサイズ分布も均一である可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、食虫目およびクジラ偶蹄目の中から、地中・水中に棲息する動物の特徴を中心に調べ、学会発表等を行った。また、げっ歯類と食虫目の筋線維特性に関する論文も作成も同時に行い、現在投稿中である。その他にも超小型のげっ歯類(トガリネズミ)、大型の哺乳動物(シロサイ、シロクマ)のサンプリングも終了し、現在分析中である。 なお、様々な動物のサンプルを得る過程で、抗酸化酵素(SOD1)欠損のマウスの骨格筋を分析する機会に恵まれ、その結果に関しては、学会発表および論文発表をすでに完了した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、小型のげっ歯類から大型の長鼻目からサンプリングした筋の分析を進め、体重10gから3トンまでの動物についての筋線維特性をまとめたい。また、これまで研究室に蓄積しているヒトの外側広筋のデータと比較し、ヒトの特性について検討したい。そのためにも、姿勢的に四足動物とヒトの間に位置する、類人猿(ニホンザルなど)の筋サンプルも28年度中に獲得し、さらに分析を進める予定である。 さらに、現在投稿中の論文に加え、上記の内容について学会発表および論文化を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に分析した骨格筋はすべて死体解剖時にサンプリングしたものであったため、高価なバイオプシー針を購入する必要がなかった。また、組織化学的分析および生化学的分析が同時に効率よく実施できたためにそれぞれの試薬が節約できた。この様な理由で、予定より物品費が多く残った。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度はサンプリングも多く予定されており、組織化学試薬と生化学試薬を含め、多くの消耗品を要する。さらに、低酸素暴露に対する骨格筋の適応変化を調べるために酸素濃度を調節するシステムを購入する予定である。また、成果発表および資料収集のために海外出張の費用も必要となる。その他の費用は、論文の英文校正および投稿料等に使う予定である。
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