研究実績の概要 |
本年度は,頻繁に直立姿勢をとる動物を含む24種の哺乳動物およびヒトを対象として,免疫組織化学染色に基づく筋線維組成を調査し,直立姿勢が骨格筋筋線維組成に及ぼす影響について検討した。 24種類の哺乳動物の6筋(腓腹筋,外側広筋,殿筋,最長筋,広背筋,上腕三頭筋)を対象とした。連続凍結切片に各ミオシン重鎖抗体(Fast,Ⅱa,Ⅱx),HE,SDH染色を施し,画像処理システムを用いて筋線維本数比,筋線維面積等を算出した。なお,ヒトについては,外側広筋以外は文献データ(J Neurological Sci. 18:111-129 (1973))を引用した。 外側広筋において、霊長目のチンパンジー(46.9%)とヒト(41.5%)で高いタイプⅠ線維割合が認められ、体重の軽いミーアキャット(44.8%)でも高い値が確認された。また、殿筋においてもキツネザル(41.7%)とマントヒヒ(40.2%)で高いタイプⅠ線維割合が認められた。一方、体幹筋である最長筋,広背筋と前脚の上腕三頭筋において霊長目はおよそ体重に相応したタイプI比率を示した。最長筋ではミーアキャット(50%)とプレーリードッグ(43.6%)に,広背筋ではヒトにおいて高いイプⅠ線維割合が認められた。 直立姿勢を頻繁に行う哺乳動物においては,抗重力的な機能的要求が強い外側広筋や最長筋でタイプⅠ筋線維比率が高くなる傾向が認められたが,霊長目共通の特性を見出すことはできなかった。概観すると,系統的な近似性より生活パターン(樹上あるいは地上生活等)が大きな影響を有することを示す結果かもしれない。
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