病気を予防し健康に日常生活を送る上で、近年、健康リスクを家庭でも把握することが重要視されてきている。その中でも、血圧は健康に関わる重要なパラメータであり、これを家庭環境で自動的に測定・管理する、さらには、血圧がどのようなメカニズムで調整されているかまで評価できるようになれば、より詳細な健康対策が可能となる。 血圧は、圧反射と呼ばれる機能により心臓・血管の主に2種類の自律神経を介して一定に調節されている。本研究では、心臓および血管圧反射機能を非侵襲に測定する新規技術を使ったウェアラブルデバイスの開発と、これを使用し、日常生活における健康状態とその寄与要因を評価・解明するための調査を、若年者を対象に実施した。 現在までの研究実績は、1)圧反射に関わる血管交感神経活動の測定技術の開発(特願2017‐067476)、2)長時間計測の結果を自動解析するためのソフトウェアの開発・改良、である。最終年度においては、測定部位の形状に個人差があっても日常生活時の圧反射機能が測定できるようにするため、3)光センサーを誰でも簡単に、かつ着けていても気にならない装着方法と測定精度を両立したセンサー構造を開発し、特許出願した(特願2018-064067)。この発明により製作したプロトタイプ機により、若‐中年者の日常生活下測定を実施し、4)過度の運動や咀嚼時以外での12時間連続測定に成功した。また、測定結果の分析により、5)睡眠時の圧反射機能の変化と前日の主観的疲労度との関連を認めた(N=8)。さらに、6)心臓・血管圧反射機能の測定結果から、血圧の相対変化を推定する方法を考案し、予備的ではあるが、対応関係を得た。
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