研究課題/領域番号 |
15K12685
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
難波 秀行 (難波秀行) 日本大学, 理工学部, 准教授 (80559790)
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研究分担者 |
山田 陽介 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 国立健康・栄養研究所 基礎栄養研究部, 研究員 (60550118)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 身体活動 / ICT |
研究実績の概要 |
身体活動不足は日本人の死因3番目のリスク(Ikeda et al.PLoS Med 2012)であるにも関わらず,我が国の身体活動はこの10年で減少傾向が報告されている.ウェアラブル端末(身につけて持ち歩く情報端末の総称)は著しい進歩を遂げ,身体活動や睡眠といった生活習慣(ライフログ)を客観的に記録する機器が注目されている.我々はこれまでに24時間行動記録を入力することにより,身体活動量および身体活動の内容を可視化できるWEBアプリケーションシステムを構築してきた.本研究ではこのシステムにGPSデータや加速度データを自動入力できる仕組みの開発を試みた.本年度は予備実験を行い,データの収集を行った.GPSデータは位置情報や移動速度などの情報を得るには優れているが,身体活動エネルギーへの変換や行動内容を特定することは難しく,加速度データは,エネルギー消費量への変換は可能であるが,行動内容の特定は難しい.そして先に開発した行動記録は,行動内容を明らかにできるが,エネルギー消費量への変換には若干課題があり,15分未満の行動内容を解析することができない.したがって,今後はそれぞれの強みと弱みを整理した上で,GPSデータおよび加速度データのどの部分を行動記録データに反映させ,1日のトータルの身体活動量に反映させるかの検討が必要である.本研究では最終的に開発したアプリケーションを用いて多人数の身体活動データを得ることにより,行動パターンの類型化や身体活動を促進する仕組みを構築するのが目的である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ウェアラブル端末を装着することによるフィードバックがどの程度,個々人の身体活動の促進に貢献しているのかを明らかにするために介入実験を行った.対象者は20-21歳の健常女性であり,介入群30人,コントロール群70人に封書法で振り分けた.介入内容は身体活動のセルフモニタリングがでるリストタイプのウェアラブル端末を3ヶ月間装着させた.この端末のその他の機能として,心拍数,睡眠状態,社会認知理論に基づく行動科学のコンテンツが含まれた.なお,介入群にはリストタイプのウェアラブル端末を配布し,使用方法について30分の説明をした.ベースラインと3ヶ月後にわれわれが開発したスマートフォンアプリケーションを用いた行動記録と加速度計による測定を1週間行った.客観的なデータである加速度計による身体活動量は,座位行動,中高強度のいずれにおいても2群間に有意な差はみられなかった.一方,主観的なデータである24時間行動記録では,座位行動で介入群では変化がなく,コントロール群では有意に増加し,中高強度では介入群では有意に増加し,コントロール群では有意に低下した. これらの結果から,主観的データと客観的データの間に違いがあり,ウェアラブル端末を装着した介入群では,主観的にはより活動的であったと感じていることが推察された.これらの結果から,本来の目的の主観的データと客観的データを融合することによるメリットのみならず,弊害等についても改めて検討する必要が生じた.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の本来の目的は,主観的データである24時間行動記録に客観的データであるGPSや加速度計によるデータを融合することであったが,先に示した研究結果では,ウェアラブル端末を装着することにより,主観的データと客観的データに違いが生じた可能性が考えられた.すなわち,ウェアラブル端末を用いることにより,活動的であったと錯覚しないように注意が必要であり,自己管理能力が低下しないように配慮する必要性がある.そこで,今後は従来の思い出し法によるドラッグ&ドロップ方式の24時間行動記録に客観的な測定データを融合することに加え,15分未満の行動を反映させる音声入力による行動記録システムを開発し,行動に対する自己認識力を高めたシステム開発に取り組む.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が平成28年4月1日付けでの異動により,当初予定していた加速度計とGPSによる行動記録に関する実験を実施できない状況にあったため.
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次年度使用額の使用計画 |
補助事業の目的をより精緻に達成するため,スマートフォンを利用した行動記録法の追加実験を予定している.
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