慢性疲労は、何らかの外的なストレスを原因として神経内分泌-免疫-炎症系の異常を生じ、その結果として疲労という言葉に代表される諸症状を引き起こす。しかしながら、現時点で主観的な診断に勝る有効な診断マーカーがなく、また類似症状を示す疾患との差異を検出する方法も見つかっていない点に問題があった。本研究では、慢性疲労症候群・慢性疲労・うつ病の対象から血液を採取し、血中の循環微小粒子を測定するとともに、微小粒子中のプロテオミクスを測定し、新規の診断法につなげる目的で研究を実施した。 今年度は、慢性疲労者(過労等で来院するが、うつ病とも慢性疲労症候群とも診断されない対象)、うつ病対象からの血液を14名採取した。健常と慢性疲労症候群では循環微小粒子の数が異なることは既に明らかになっているが、慢性疲労症候群と類似の症状を示すうつ病や慢性疲労での差を検出することで、新規の診断マーカーとできるとともに現在、疲労に効果があると市販されているOTC医薬品やサプリメント、医療機器などの慢性疲労への効果判定に利用可能である。効果判定が可能となれば、慢性疲労に効く新しいサプリメント・医療機器・身体的運動法等の開発が促進され、60%の国民が感じる疲労を軽減できることが期待される。現在、鋭意解析中である。 また、微小粒子中のプロテオミクスは、慢性疲労症候群と健常でその量に差異があるところまでが明らかとなっており、今後も引き続き解析を実施する。
|