研究課題
免疫応答は加齢とともにその正常な機能が失われるため、高齢者での感染症は重篤化しやすく、またワクチンに対する応答性も低下している更に高齢者で問題となる疾患の多くで免疫学的異常との関連が指摘されている。一方、HIV感染症は免疫システムの破綻が病態の本質であるが、近年、慢性HIV感染者では免疫学的特徴が高齢者と多くの点で共通しており、不可逆的な免疫老化と呼ばれる状態に陥っていることが明らかとなってきた。本研究では、HIV感染者試料を用いて免疫老化状態における分子レベルでの免疫学的特徴を明らかにし、未だ明らかとなっていない免疫老化を規定する要因の特定を目指した。免疫老化状態にあるHIV感染者におけるT細胞免疫機能の異常を明らかにするため、刺激応答性の遺伝子発現について、マイクロアレイによる網羅的解析を行った。免疫老化状態が亢進している感染者においては、サイトカイン、ケモカインや、T細胞活性化に関連する細胞表面受容体や転写因子等のT細胞機能に直結する遺伝子群で異常が見られた。興味深いことに、T細胞機能は一方的に低下しているわけではなく、T細胞刺激後に過剰な遺伝子発現が見られる遺伝子群も観察された。この結果は、HIV感染による持続的な免疫活性化状態にあることで、T細胞が容易に活性化されやすい状態にあることが示唆された。私たちの免疫システムは日常的に様々な微生物等の抗原に曝されているため、高齢者においても加齢に伴い免疫学的負荷が累積していくことで、免疫老化状態に陥っているのではないかと考えられる。
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