本研究は、高齢者の片脚立位トレーニングに際し、高齢者の状態に応じてどのような片脚立位条件の選択が望ましいかを検討するために、各種片脚立位条件における下肢筋活動と重心動揺量の関係性の明確化、難度の序列化、さらにトレーニング時の重心動揺量とトレーニング効果との関連を明らかにするとともに、トレーニング条件や効果を診断できる片脚立位トレーニングサポート装置の開発を目的としている。昨年度、手をタッチする位置(前方 or 側方)とタッチ圧条件(強タッチ、弱タッチ、任意タッチ)の組み合わせにより片脚立位時の姿勢の安定性や下肢筋活動量が変化することが明らかとなり、補助方法による難度の序列化に向けた示唆が得られた。しかしながら、その影響は性別や体力水準、転倒リスク等によって変化する傾向に加え、高齢者の集団特性を踏まえたより詳細な解析が必要であることが示された。 今年度は、測定した高齢者集団をさらに増やし、各種片脚立位条件と年齢、体格、歩行能力、ADL能力、転倒危険性等の関係の検討をより詳細に進めた。以下のことが明らかとなった。1)補助を伴う片脚立位時の姿勢の安定性は男性が女性よりも不安定であり、性別の違いが姿勢保持難度に影響を及ぼす可能性がある。2)男性においては、身長が高いほど補助を伴う片脚立位時の重心動揺量が多く、片脚立位トレーニング実施者の体格の違いが姿勢保持難度に影響を及ぼす可能性がある。3)バランス能力に劣る人は、手を強くつく傾向にあり、重心動揺量も大きく減少する。そのため、片脚立位トレーニング実施者のバランス能力の違いが姿勢保持難度に影響を及ぼす可能性がある。4)男性では転倒リスクの高低により、女性ではADL成就能力の優劣により、補助を伴う片脚立位時の重心動揺量に違いがある。トレーニング実施の身体機能に関連するプロフィールが姿勢保持難度に影響を及ぼす可能性がある。
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