研究課題/領域番号 |
15K12698
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
太田 嗣人 金沢大学, 脳・肝インターフェースメディスン研究センター, 准教授 (60397213)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 機能性脂質 / スフィンゴシンキナーゼ / 非アルコール性脂肪肝炎 / 肝がん / スフィンゴシン1リン酸 |
研究実績の概要 |
肥満人口の増加に伴い急増する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、肝臓の異所性脂肪蓄積から生じるリポトキシシティ(脂肪毒性)を上流病態としている。しかしながら、NASHに特異的な発がんメカニズムは未だ不明である。本研究では、機能性脂質を介した肝がん形成の分子標的と考えるスフィンゴシンキナーゼ(SphK)に着目し、NASH特異的発がんにおけるスフィンゴシンとその代謝を制御するSphKの役割を明らかにすることを目的とする。 平成27年度は、スフィンゴシン合成の律速酵素であるSphKがNASH発がんの分子標的となるかを検証するため、培養肝細胞を用いたSphKプロモーター解析、NASHモデル動物の肝臓におけるSphKの発現と局在を検討した。 NASHモデルマウスの肝臓では、正常肝に比し、SphKの酵素活性が増加していること、SphKの遺伝子発現が増加し、細胞質において強く発現していることを明らかにした。SphKのノックダウンにより、SphKの酵素活性を低下させると、腫瘍増殖が低下し、肝発がんが抑制されること可能性が示唆された。 また、ヒトの肝組織において、肝がんを発症した背景肝において、SphKの酵素活性が増加し、遺伝子発現が増加していることを見出した。また、抗腫瘍効果を持つレチノイドを投与した肝がん治療群の肝臓では、SphKの発現が低下しており、SphKが肝がん治療の新規標的となりうると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデル動物や肝がん細胞株をもちいて、脂肪肝、NASH、肝がんにおけるSphKの発現や活性を解析し、一定の研究成果を得ることができた。ヒト肝臓でも、同様の結果を得ることができた。次年度以降、SphK遺伝子改変マウスを用いた解析を行うことが可能な状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
SphK遺伝子改変マウスに、高脂肪食や化学発がんによるNASHからの肝がんを誘導し、NASH特異的肝発がんにおけるSphKや機能性脂質S1Pの役割を明らかにする。特に、スフィンゴシンが治療標的になりうるかという観点から、解析を進める。最終的に、機能性脂質メディエーターの代謝制御に基づく、新しいNASH特異的肝がん治療薬の開発への展開を目指す。
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