研究実績の概要 |
骨格筋では加齢、廃用、脱神経など様々な要因で障害が起こるとされている。障害後の骨格筋細胞のアポトーシスや筋衛星細胞の再生不全は、サルコペニアの発症・進展の要因の一つであると知られている。我々は近年動脈血管壁に障害を誘導した際に、障害細胞、特にアポトーシスを起こした細胞で発現が亢進し、放出されるparacrine 増殖因子(GFX, 特許出願中)を見出し、GFX が障害後の組織修復(再生)に重要な役割を果たしていることを明らかにした。しかし、GFXが骨格筋細胞から分泌するか否かならびにその機能と運動のGFX発現への影響に関してはまだ明らかになっていない。そこで、まず、研究代表者はGFXが障害骨格筋細胞から分泌され、骨格筋細胞再生への関与を明らかにする為、野生型マウス(9週齢, 雄, C57BL/6J)の片側下肢骨格筋に心臓毒(Cardiotoxin、CTX,10μm/0.2ml)投与による骨格筋障害モデルを作成し、経時的に骨格筋を採集し、生化学ならびに組織学検討を行った。その結果、CTX投与三日目にコントロール群と比較して、GFXのmRNA(約20倍)ならびにGFX蛋白の発現亢進を確認した。筋芽細胞株C2C12細胞においても種々の方法でアポトーシス誘導をかけるとGFXのmRNA・蛋白発現亢進が確認された。更に、細胞実験において、GFXによるC2C12細胞のmigrationと増殖能の亢進が確認された。更に、C2C12細胞におけるGFX刺激によるAkt、mTOR、Erk1/2並びp38MAPKのリン酸化亢進を認めた。まだ、プレリミナリーな結果(今後n数を増やして追加実験をする予定)ではあるが、GFX中和抗体投与により、CTX投与後の骨格筋のリモデリングの悪化傾向を認めた。これらの結果から、間違いなく骨格筋の障害によりGFXの発現を認めること、さらに細胞実験より骨格筋細胞にはGFXに対する受容体が存在していることが明らかになった。また骨芽細胞株を使用した実験からはGFXは受容体を介して骨芽細胞の増殖、遊走を刺激することが明らかとなった。
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