研究課題
サルコペニアの発症・進行において、細胞のアポトーシスが重要な役割を果たすとされている。しかし、詳細な機序については依然解明されていない。申請者は平成27年度に、野生型マウスの片側下肢骨格筋に心臓毒(Cardiotoxin)の投与による骨格筋障害モデルにおいて細胞アポトーシスと増殖に大きく関与するとされる新規増殖因子(GFX)のmRNAならびにタンパク質発現亢進を明らかにした。そこで、本年度は、GFXの中和抗体投与(300μg/kg・day; 術後0日目、2日目、5日目、7日目と10日目)後、計画書どおりにサンプリングと解析を行った。その結果、中和抗体投与3日目の定量PCR解析において、生食投与群に比較して、GFX中和抗体投与による骨格筋分化の指標であるPax7やMyoDおよび増殖の指標であるcyclinB1の著明な抑制が観察された。また、Western Blotting法ではGFX中和抗体投与群においてAKTとGSKのリン酸化の誘導抑制が確認された。14日目の組織学的解析において、GFX中和抗体投与による障害骨格筋機能悪化と間質の線維化の面積の増加と骨格筋幹細胞(CD34/integrinα7)数の著しい低下が認められた。一方、GFXの組み換え蛋白質(250μg/kg・day)を上記の中和抗体と同様のプロトコールにて投与し解析を行った結果、生食投与群と比較し、GFX投与7日目において、トレッドミル運動能力テストの仕事量および四肢握力の改善が認められた。細胞実験において、GFXによるC2C12増殖能亢進ならびにGFX中和抗体の前処置によるp38MAPK、mTOR、AktとErk1/2のリン酸化の著しい抑制が認められた。この結果から、GFXが骨格筋のリモデリングと再生において大きく関与し、筋肉障害を始めとする骨格筋疾患治療の新たな分子ターゲットになりうる可能性が示唆された。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle.
巻: - ページ: -
10.1002/jcsm.12166