研究課題/領域番号 |
15K12700
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 高史 京都大学, 情報学研究科, 教授 (20431992)
|
研究分担者 |
廣本 正之 京都大学, 情報学研究科, 助教 (60718039)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 脈波推定 / ノイズ / 信号処理 |
研究実績の概要 |
非接触での生体情報の常時観測を目指し、まずは電界センサを用いた人体検出手法について検討を行った。具体的には、有限要素法にもとづく電磁界シミュレータを用い、導体(人体)がセンサに近付いた際に観測される電圧の解析を行い、センサ構造の検討およびその特性についての詳細な解析を行った [岸野他、電子情報通信学会総合大会]。 電界センサの検討と並行して、より微小な体動を検知できる可能性のある静電容量センサについても検討を行った。予備的に試作した、近接導体の形状変化を静電容量の変化として観測するセンサにより、脈波に近い波形を得ることができている。しかし、この際に観測される波形には、人間の体動や、体温によるセンサの膨張・収縮、および周囲の電磁界環境の変化により生じるノイズ等が強く重畳されていることが判明した。非接触での生体情報取得に向けて、こうしたノイズの大きい環境下で得られる測定データから正確に脈波等の情報に変換する信号処理技術が重要であることが明らかとなったため、今年度はまず、こうしたノイズが重畳された脈波から元の脈波を推定する信号処理手法の開発に取り組んだ。 Webに公開されている、体動等による大きなノイズを含む光電脈波測定データと加速度センサのデータを例題として、脈波を推定する手法を検討した。提案手法では、ノイズに頑健な推定を行うために、粒子フィルタを応用して周波数スペクトルのピークを複数追跡する。提案手法により、これまでに提案されている手法と同等またはより良い精度で心拍数を推定することが可能となった[藤田他、電子情報通信学会ソサイエティ大会] [藤田他、回路とシステムワークショップ]。 提案手法は、それ自身でスマートウォッチ等の活動量計での心拍推定に有用である。今後はさらに、本手法を活用し、脈波推定、および脈波からの心拍数、血圧等の生体情報の取得へ研究を展開する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
櫛形(交差指型)電界センサ等、大型のセンサを用いる非接触の測定において不可避と考えられる、ノイズが重畳された測定データに対し、ノイズの影響を低減して精度よく脈波推定を行える技術を確立できたことは大きな成果である。この手法の応用は、かならずしも電界センサに限定されず、例えば画像を入力として脈波の推定を行う場合等にも応用できる。
|
今後の研究の推進方策 |
脈拍数や血圧等の生体情報を非接触に得るという目標に向け、脈波推定結果から脈拍数や血圧等への変換方法について調査・検討を行っている。その結果、脈波を人体の複数箇所で測定することにより脈波の伝搬速度を求め、これを血圧等に変換する方法が提案されていることがわかった。本研究でも、上記、ノイズに頑健な脈波推定技術を応用して、脈波推定、および脈波からの心拍数、血圧等の生体情報の取得へ研究を展開する。
そのために、当初検討していた櫛形の大型電界センサに加え、画像による脈波推定手法について検討を行う。画像センサでは、電界センサと比較して、人体複数箇所の同時測定が比較的容易であるためである。
電界センサでは、人体のかなり大きな部分についての測定となるため、複数箇所の測定を行うには、センサの空間分解能を向上させることが重要となる。センサの空間分解能を向上させる方法についても並行して検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
センサから受けたアナログ信号をディジタル信号処理可能とするために、高速A/D変換ボードを購入した。複数のボードを比較検討した結果、当初の予定よりも安価に購入できたことが主な理由である。
|
次年度使用額の使用計画 |
これまでの検討により、より確実に非接触での血圧推定をより確実に行うよう、静電センサによる検討に加え、画像からの脈波取得を行うこととなった。その際には、高フレームレートのカメラ等が必要となるため、その購入に充当する計画である。
|