研究課題/領域番号 |
15K12701
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
依藤 史郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80191675)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ツインスタディ / 脳磁図 / 高次脳機能 / 言語 / 運動観察 / 遺伝 / 環境 |
研究実績の概要 |
長い人生の間に環境の変化がヒトの脳に対してどのような影響を与えるのかについて、脳の可塑性という観点から、高齢ふたごの言語処理及び運動観察の脳活動の差について脳磁計を用いて解析した。 双生児ボランティアに協力をいただき、動詞想起課題を行っている際のlowγ帯域の事象関連脱同期(ERD)の類似性を検討した。空間フィルター法を用いたグループ解析により,単語提示後500‐1000msから左前頭葉にERDのピークが認められた。この部位にvirtual sensorを設置し時間周波数解析を行ったところ,500‐1000msにおける左前頭葉のERDのパワーの相関係数が、一卵性は0.42,二卵性は0.20,他人間は-0.02となり,二卵性や他人間と比較し一卵性で高い相関係数となった。さらに,ERDパワーにおける遺伝と環境の寄与率を共分散構造分析により算出すると,遺伝が50.1%,環境が49.9%となった。 運動観察時の脳活動については、被験者に示指または中指伸展挙上運動を観察するよう指示し、その際の脳活動を脳磁図により捉えた。空間フィルター法により各個人の脳活動を算出した後、Group解析により全被験者に共通して強いERDが認められた時刻、脳領域を特定した。そしてその時刻、領域について各個人のERDパワーを算出し、双生児間でのERDの強さの相関係数を評価した。さらに共分散構造分析を行いERDの強さについて遺伝要因と環境要因の影響の割合を推定した。その結果、動画観察開始後300~600msにおいて左下頭頂小葉を中心としたβ帯域の強いERDが認められ、同領域のβ帯域ERDの強さは一卵性双生児間で0.68という有意な相関係数が得られたが、二卵性双生児においては0.20となり有意な相関が認められなかった。また共分散構造分析により算出された割合は、遺伝65%、環境35%という結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
多くの高齢ふたごの皆様に協力いただいて予定数の脳磁図計測は完了したが、データが膨大で解析にかなりの時間を要したため、年度内に論文執筆まで進めることができなかった。現在期間を延長して論文を鋭意作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は当初から単年度の研究であり、延長はしているが今回行った結果の論文を書き上げれば終了となる研究である。双生児研究は大変貴重なデータを得ることができるので、このコホートを活用してさらに重要な脳機能の解析を行うことが期待されるが、研究責任者は定年退職のため、研究協力者達が研究を引き継いで発展させてくれるものと期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文作成が当該年度内に完了しないことが明確になった段階で、論文投稿料および英文査読料を確保しておく必要性が生じたためこの額を残した。期間延長を認めていただき、論文を作成中である。
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次年度使用額の使用計画 |
使用計画は、論文投稿料が202,226円、英文査読料が50,556円です。
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