研究課題/領域番号 |
15K12704
|
研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
田中 豪一 札幌医科大学, 医療人育成センター, 准教授 (10167497)
|
研究分担者 |
小林 皇 札幌医科大学, 医学部, 助教 (30404669)
加藤 有一 札幌医科大学, 医療人育成センター, 講師 (90363689)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 生活習慣病 / 動脈硬化 / 慢性ストレス / 血管内皮機能検査 / 動脈スティフネス検査 |
研究実績の概要 |
本研究では新規に考案した指細小血管拡張能検査(ADA法)の妥当性と臨床的有用性を検証する。H28年度には前年度に考案したADA片手連続法について,その妥当性と有用性を健常青年と動脈硬化性疾患患者において検証し,同法の国際特許PCT出願を完了した。 【研究1】ADA法を両手で行う両手法と既存のエンドパット検査の一致性を,糖尿病患者で分析した結果,極めて高い一致を認めた(r=.97, n=12)。 【研究2】健常青年を被検者とし,ADA法を片手で行う片手法とエンドパット検査との同時測定による妥当性検証を3つの実験(n=15, 27,22)で行った。実験1では,腕駆血と指基節部駆血の駆血前後の血管拡張に極めて高い一致を認めた(再還流後経過時間によりr=.88~97)。実験2では,2指駆血両手法に対して1指又は5指対照の片手法の一致性は極めて高かった(それぞれr=.91, 95)。実験3では,1指を対照とする2指駆血片手法と両手5指のエンドパット検査を同時に行い,独立した4か所の値から相関を算出した結果,高い一致性を認めた(r=.88)。 【研究3】ADA法における標準の検査指標NPVI以外の新しい評価指標のBVI,DI,SIも含めて,その臨床的有用性を確認するため,糖尿病患者(n=14)と動脈硬化のない対照としての前立腺がん患者(n=19)を比較した結果,BVIとDIにおいて有意性を認めた。片手法検査の指駆血は痛みのないため,痛みに関連する交感神経緊張の影響を排除できる点が原理的な利点であり,以上の基礎・臨床研究成果により,その臨床的有用性が確認できた。 【研究4】ADA検査(腕駆血両手法)と健常女子青年(n=40,19.7±1.7才)の慢性ストレス関連心理社会要因および生活習慣要因の相関関係を調べた結果,特に怒り感情に関連する心理特性との有意な相関関係を認めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ADA法の必須要素であるRH-FCR法(指動脈コンプライアンスを標的としたFCR原法)において片手法を併用するFCR片手法を開発することが当初計画であったが,より精度に優れる検査法としてRH-ADA連続法を考案し,国内および国際特許出願に至った。その研究過程で,ADA両手および片手連続法の妥当化のための基礎資料収集,および,その検査プログラムの改良のために期間を要したため,当初の計画に遅れが生じた。しかし,今後に向けて,ADA片手連続法による基礎研究と臨床研究に焦点化する方向性が定まった。
|
今後の研究の推進方策 |
以下のサブテーマは,FCR片手原法により進める計画であったが,ADA両手連続法とADA片手連続法に代えて実施する。 1.サブテーマ1(基礎): ADA両手および片手連続法の信頼性・妥当性(札幌医科大学,田中・加藤および北海道大学循環器内科,古本) 健常青年30名を対象に,最も隣接指への波及効果の少ない検査指を確定したのち,エンドパット法との同時測定により一致度を評価する。また,対象者の一部16名を選抜し,異なる日に複数回検査しその変動係数によって信頼性を評価する。さらに,慢性ストレスの質問紙調査を実施し,ADA片手法との相関性を調べる。北海道大学病院循環器内科の古本智夫は研究協力者である。片手法の指を確定し,健常者研究を久留米大学にも依頼する。 2.サブテーマ2(臨床):糖尿病・高血圧患者における心血管リスクファクターとの関係(北海道大学循環器内科,古本・田中・加藤) ADA両手連続法の検査値は伝統的な代謝リスクファクターとの関連性を認めるか,また,病歴・病態と関係するか,健常成人および糖尿病・高血圧患者 50名を対象に調べる。 3.サブテーマ3(臨床):性機能障害の背景をなす動脈硬化の評価(札幌医科大学付属病院泌尿器科,小林・田中) 前立腺がん手術適応の患者50名において検査を継続し,日常生活での性機能に関する質問紙(国際勃起能指数IIEF5)と,指動脈弾力性(FEI)・指動脈スティフネス(FSI), ADA両手・片手連続法の関係を,年齢および病歴を調整した統計法を用いて調べる。 4.サブテーマ4(臨床):睡眠時無呼吸症候群(SAS)の経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)の治療効果の評価(北海道循環器病院,山本・田中)札幌南1条病院の事情により検査が困難となったため,新たな参加施設として北海道循環器病院でSASを含む動脈硬化疾患臨床研究を実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
科研費研究の当初計画では,そのサブテーマの1つとして協力病院での動脈硬化患者のデータ収集を平成27から29年度にかけて行うことになっていたが,同病院での研究に遅れが生じたため,謝金と研究分担者に配分予定していた費用が未使用となった。未使用分は平成29年度の研究で使用する。
|
次年度使用額の使用計画 |
未使用分は,当初計画におけるサブテーマにしたがって臨床研究を実施するため,平成29年度中に使用を完了する。
|