研究課題
本研究では,水泳・水中運動の安全な実施を促進することを目的に,水中での脳酸素動態を明らかにした上で,そのメカニズムを解明することを目的とした.最終年度には,運動中の脳循環および体循環の関係を検証するために,運動による体温上昇の影響を明らかにするための実験を実施した.具体的には,健常成人男女11名を対象に,水中安静時の脳血流,脳酸素化ヘモグロビン,下肢筋血流量,酸素摂取量,換気量を同時計測した.プロトコルはこれまでと同様,3分間の陸上安静,15分間の注水,5分間の腋下浸水,5分間の排水,5分間の陸上安静とし,総計測時間は33分であった.水温条件には,27℃,35℃,42℃の3条件を設定し,その違いを比較した.その結果,酸素化ヘモグロビン濃度の反応は水温によって異なり,42℃および35℃では上昇がみられたが,27℃ではわずかに低下する傾向が見られた.特に,42℃では劇的な上昇がみられたことから,脳循環が体温の影響を受けることが確認された.最終年度の結果およびこれまでの結果を統合して運動中の脳循環と体循環の関係について分析すると,水中環境では浸水条件(水深・水温)によって,脳・体循環ともに変動することが明らかとなった.運動時については,運動によって生じる体温上昇・交感神経活動の亢進・運動強度の影響が脳循環へ大きく影響していることが明らかとなった.今後は,それぞれの貢献度の違いを明らかにすることで,安全な運動実践を導くリスク管理指標が作成できると考えている.
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PLoS One
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http://www.ihmms.jp/