研究課題/領域番号 |
15K12716
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研究機関 | 四国学院大学 |
研究代表者 |
片山 昭彦 四国学院大学, 社会学部, 准教授 (00435075)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 健康関連QOL / 費用対効果 / ランダム化比較試験 |
研究実績の概要 |
健康関連QOL(Quality of Life)改善のため、限りある資源を有効活用し最大の効果を得ることは、行政にとって非常に重要な視点である。少子高齢化、医療費高騰など地域行政が抱える健康問題は多様化し、対策は急務である反面、財政的には十分ではない。資源の有効活用が、健康施策に求められている。健康日本21(第二次)には、「社会環境の整備」が掲げられているが、これには設備だけでなく、組織や仕組みも含まれる。健康運動事業においては、健康運動設備投資だけでなく、人材、システムへの投資についても十分に考察すべきである。本研究の目的は、主に「人材へ投資」する健康運動教室と、主に「設備へ投資」する健康運動教室とを比較することにより、身体的健康指標だけでなく、精神的・社会的健康度の評価を加え、健康関連QOL改善のため、資源の投資先の違いによる費用対効果をランダム化比較試験により実証することである。 本研究の目的を達成するため、上記に示した2種類の健康教室を実施するうえで、複数の行政担当者から、再度聞き取り調査を実施した。健康運動教室の目的として、精神的・社会的健康度の評価の重要性を再認識し、それらを重視した研究デザインに修正した。また、短期的な効果を求めるだけでなく、長期的な効果、つまり「行動変容」「健康意識の継続」の必要性から、継続的に調査が可能な研究デザインに修正した。また、上記指標の測定に関して、的確に対応できる指標を再選定した。 あくまでも現場のニーズに対応できる研究成果を求めるため、再度実施した行政への聞き取りは、本研究の目的をより明確にした。平成28年度から実施する実際のスケールの健康運動教室は、行政機関のより充実した協力を得ることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度当初より、計3クールに区分した健康運動教室を実施する。十分な準備期間ののち、実際のスケールでより実践に近い環境設定が可能となった。 対象者募集に関しては、行政機関、民間施設、地域メディア等の協力のもと、研究目的を維持可能な十分なサンプルサイズの対象者を選定することができた。本研究のメインとなる健康運動教室の運営資金の投資方法の設定に関して、より実践に近い状況設定とすることが重要であるとの認識のもと、行政機関施設に交渉した結果、使用、環境設定等の快諾をいただいた。また、健康運動指導者においても、健康運動指導士会との交渉により趣旨を理解していただき、講師派遣が可能となった。健康運動教室実施期間、参加者を対象とする測定に関しては、選定項目の再検討、また計測実施の予行等も実施し、運営上問題はない。 各機関の協力を得て、十分な環境設定の下、健康運動教室を実施し、測定が開始される。よって研究の進捗状況としては、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度、計3クールに区分した健康教室を実施する。各クールには、人材投資型の健康運動教室(主として担当インストラクター指導による運動教室)と、設備投資型の健康運動教室(主としてエクササイズ機器を用いての運動教室)を平行して開催する。各クール12回程度(約3ヶ月間)の実施期間とする。行政機関の協力により、市立体育館内の設備を有効に活用することが可能となった。また、健康運動指導者の派遣に関して、健康運動指導士会の協力を得ている。参加者募集に関しては、行政機関、地域メディアの協力を得た。研究目的とした健康教室への参加する上で、参加者の十分な理解を得るために説明会を実施した。結果、研究計画に足りる参加希望者を得た。 健康運動教室、各実施クールの前後において、健康関連指標、特に精神的・社会的健康度の測定を実施し、各クール期間中に身体的健康関連指標の測定を実施する。第1クール終了後、第2クール開始においては、グループを入れ替えることによりクロスオーバー試験とする。第3クールは参加者の任意とし、その行動も含めて測定対象とする。 計3クールの健康運動教室において測定した結果に基づき、平成29年度において、解析を実施する。あわせて、行政が必要とする指標である、長期的な効果、つまり「行動変容」「健康意識の継続」に関して、継続的に追跡調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付額決定後に、研究デザインの再検討を実施した。当初の計画では、健康運動教室を4クール、対象者80名にて実施する予定であった。交付額の状況より健康運動教室の規模を縮小する必要があった。対象者の人員を減少することは、サンプルサイズの減少となり研究目的を達成するためのパワー不足となると判断した。よって、4クールの実施を3クールとし、かつ行政機関との交渉により、必要かつ十分な環境を提供していただくことが可能となった。4クールの実施予定から3クールの実施となった縮小により、測定開始(健康運動教室開始)を28年度4月開始とした。行政機関との調整により、年度開始時点での実質的な運用開始が、施設運営上、また対象人員募集に関しても、最も有効で実践的であると判断した。したがって、健康運動教室運営費たる人件費・謝金、物品費等において次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度において、健康運動教室を3クール(各クール12回程度 約3ヶ月間)実施する。その運営費として、人件費・謝金、物品費等を使用する。研究デザインの再検討を実施した結果、4クールから3クールへ縮小運営することとなった健康運動教室の実施は、主として平成28年度であり、健康運動教室終了後は、参加者への追跡調査を実施する。よって、平成28年度中に、平成29年度運用予定であった人件費・謝金を一部運用する予定である。
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