限りある資源を有効活用し最大の効果を得ることは、行政にとって非常に重要な視点である。資源の有効活用が、健康施策に求められている。健康運動事業においては、健康運動設備投資だけでなく、人材、システムへの投資についても十分に考察すべきである。本研究の目的は、主に「人材へ投資」する健康運動教室と、主に「設備へ投資」する健康運動教室とを比較することにより、資源の投資先の違いによる費用対効果をランダム化比較試験により実証することである。 経営資源の投資先のみを変えた2種類の健康運動教室を同時並行で開催し、参加者の動向・変化を追跡するシンプルな構成である。実際に行政機関等と協働し研究を進めるが、その背景には、研究結果を今後の健康施策に生かしたいという行政からの意向があった。 初年度は、研究対象とする健康運動教室実施の準備段階とした。中間年度は、研究対象とする健康運動教室を実施し、参加者のデータを継続的に収集した。最終年度は、データの収集と解析を実施した。合わせて、最終年度も参加者の自主運営的な研究協力を得るとこができ、健康運動教室を継続的に開催し、長期的な効果についても、継続的に調査を実施することが可能となった。最終年度終了後も、継続的にデータを収集中である。 12週(60分×12回)の健康教室、主に「人材へ投資」する健康運動教室と、主に「設備へ投資」する健康運動教室を介入後に2群間で比較した場合、「人材への投資」群においては精神的健康度が、「設備投資」群においては自己効力感が有意に向上した。体力レベルにおいては、差は認められなかった。これらの結果から、健康教室を企画、運営する場合に、限られた経営資源を有効に投入し、適切な効果を得るという目的に沿って、健康教室の運営形態を決定する有効な資料となると考えられる。
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