東日本大震災の代表的な被災地である東北3県のみならず、国内外の災害被害が懸念される小学校高学年児童に対する防災教育の出前授業を実施した。(1)科学的に解明する自然災害のメカニズムと、人間がいかに行動すれば被害を軽減できるのかを可視化された講義に加えて、(2)実際に災害が起こった時、自分はどのように行動するのかを考えるゲームを数人のグループで体験した。(3)体験したゲームの結果をグループ内でディスカッションし発表した。このプログラム構成は児童の意識変化をアンケート調査で明らかにしながら、自然災害科学として児童の興味を引き出し、グループワークに用いたゲーム性のある補助ツールはこれまでになかったスタンプラリーの形にすることができた。グループワークの結果は、児童がお互いに選択肢の根拠を話し合い、まとめることによって、災害時の行動とそれにつながる備えに気づくことができた。 この試みが児童の減災意識を向上させる効果があるのかを検証するために、授業の事前、事後、約1ヶ月後に質問紙調査を実施した。結果、児童の居住地の地域特性によって、意識変化に違いがあることも明らかとなった。近くで大きな被害があった地域では、防災教育によって災害に対する脅威意識や防災意識の高まりがみられたが、その持続性は低かった。災害経験がなくても近い将来に大きな災害による甚大な被害が予測される地域では、防災教育による効果が持続しやすかった。一方、災害による直接被害がなく近隣での被害もない地域では、災害の知識に乏しかったためか、防災教育によって災害に対する脅威意識が上昇するだけでなく、自身の避難行動に関する自信が低下したり、家族に対する思いが強まったりした。 災害そのものの映像や画像を使わなくても、減災意識は向上させる事が出来たが、その効果は一過性のものであった。地域特性を考慮し、意識の持続性に着目した教育手法が必要である。
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