研究課題
自閉スペクトラム症(ASD)は多因子性の疾患で、遺伝要因とともに環境要因の重要性も指摘されている。とくに胎児の環境としての母体は、様々な化学的、物理的環境、感染や社会的環境に起因するストレスにさらされ、免疫システムを介して神経発達に必須な脳内サイトカインネットワークに影響を与える。本研究では以下の検討を行った。①自閉症の発症リスク因子としてのバイオマーカー探索を目的に、高機能ASD児43名(TD=29, ASD=14)およびASD者126名(TD=98, ASD=28)を対象とした miRNA(micro-RNA)解析を行った。・アレイを用いた網羅的解析により、3200個の中からマーカー候補を絞った。・ASD児・者において、子どもと成人に共通してmiRNA発現に有意差が見られた3候補(miR-122-5p, miR-3925-5p, miR-4755-3p)を見出した。② ASD児は社会的情報(顔における目など)への注視時間が短いという報告がある。福井県永平寺町で出生した子の発達に関する前向きコホート調査参加者のうち同意が得られた母子に対し、幼児期ASDの早期発見を目的として開発された視線計測検出装置(Gazefinder®)を用いて視線計測を行った。その結果、オキシトシン受容体(OXTR)遺伝子多型と視線計測による社会性発達評価との関連を解析した結果、月齢との交互作用が見られ、発達とともに視線の選好パターンが有意に変化するものの、OXTR遺伝子多型により選好パターンの発達が異なっていた。ASDでは、miR-122-5pの発現が有意に上昇マーカー候補となり得る結果を示した。miR-122-5pは、ADAM10の発現を負に制御しており、またADAM10はニューロリジン(NLG1)の制御に関わり、ASDとの関連性が示唆されている。今後はその生理的機序の解明に取り組みたい。
1: 当初の計画以上に進展している
自閉症の発症リスク因子としてのミクログリア活性化分子ネットワークに着目した miRNA(micro-RNA)解析およびオキシトシン受容体(OXTR)遺伝子多型と視線計測による社会性発達評価との関連に関する解析については、複数の実験を終了し、現在国際誌投稿の段階に入っている。本研究の独創性を反映したユニークな視点、手法による結果が得られたため、当初の予定を超える順当な成果をあげたと評価できる。
今後はASD児およびASD者において、miRNA*唾液中オキシトシンホルモン値*脳MR画像*視線計測検出結果を組み合わせることにより、判別率の向上を目指したい。
脳イメージング研究による病態解明のための被験者リクルートが当初の計画通り進まなかったため
さらに被験者リクルートを積極的に行い、得られたデータからASDの複数の中間表現型、即ち脳画像、脳波、行動、分子データを、多変量解析し、創薬候補分子を絞り込むためのアルゴリズムを開発する
http://tomoda.me/research.htmlhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?cmd=search&term=Tomoda
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