研究課題
健康日本21では「健康格差の縮小」を基本方針としているが、具体的な解決策を提供できている先行研究は少ない。また、健康格差を拡大させると考えられている「社会経済的要因」を扱う研究は、個人情報保護等の問題から増えい状況が長く続いてきた。そのため、我が国では社会経済的要因が健康格差にどのように影響しているかの実態が理解されているとはいえなかった。そのような背景を受けて、本研究の目的は、1)社会経済的要因と健康・学力の関連性を横断的かつ縦断的研究に検討し、その基盤的要因を明らかにすること、2)社会経済的要因の悪影響を強く受ける集団に着目し、その悪影響を軽減する“運動関連指標”の影響を探索的に解明し、社会経済的要因の悪影響の「解明」から「解決」へとパラダイムシフトの実現を目指すこととした。本研究目的の実現のために、公立中学生1年生のコホート集団(約1000名)を3年時まで追跡し、構築したデータベースから次のような知見を公表することができた。その概要をまとめると、1)社会経済的要因の中でも、保護者の学歴や世帯年収は中学1年生の学業成績に有意に影響し学力格差を助長する可能性があること、2)生徒の体力は社会経済的要因とは別に影響し、体力が高いほど学業成績を高める可能性があること、3)逆に肥満度が高いと生徒の学業成績を悪化させる可能性があること、その他では4)学習状況やテレビゲームなどのスクリーンタイムが生徒の学業成績に有意に影響する、こと等を海外学術雑誌に公表してきた。上記はすべて中学1年時の横断研究の成果であり、縦断調査の分析結果も評価の高い国際誌に投稿を進めている。以上より、中学生の学業成績の格差拡大に社会経済的要因は悪影響を見せるが、その悪影響に対し、高体力や肥満予防、学習状況やスクリーンタイムの過剰利用の是正が学業成績の格差縮小に好影響をもたらす可能性があることが明らかとなった。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件)
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