首都圏などでは保育園等の子どもの声による近隣騒音問題が大きな社会問題となっており、待機児童問題への影響も懸念されている。本研究の当初の研究計画では、子どもの声の大きさやその影響を評価し、それを基に受忍限度の基準値を策定し、広く社会に提示することを目的としていたが、研究を進める過程において、基準値よりも解決のための協議システムを提案することの方がより現実的であるとの考えに集約し、それらの内容を、研究成果報告書「保育園等での子どもの声の騒音問題に関する地域共生のための検討報告」として取りまとめた。 研究成果報告書の第1部は「保育園での子どもの遊び声の騒音問題の概要」として、現在のこの問題の位置づけと社会的な対応を整理した。第2部の「保育園での子どもの遊び声に関する騒音測定調査結果」では、これまでデーターが無かった保育園園庭での子どもの遊び声の大きさと周波数特性、塀の効果などの音響データーを明らかとし、技術的な対応を可能とした。また、第3部の「保育園での子どもの声の遊び声に関する市民意識調査結果」では、首都圏でのアンケート調査結果により、反対運動の本質は騒音問題に関する不安感であり、これを払拭できればこの問題の解決が可能であるなど、これまでになかった新たな情報と知見を提示した。これらの結果を基に協議システムによる解決の可能性を示し、その詳細を第4部「保育園等施設の建設および運営に関する地域共生のための協議システムの提案」として示した。この研究成果報告書は、全国の主要自治体に送付されているため、これらの成果に基づいて、当該問題解決のための具体的な機運が高まることを期待している。
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