研究課題
本研究は、3年間の研究を通して、生殖医療技術や母体を介した環境要因による次世代の学習能力への影響について、行動学的検討を中心に解明することを最終目標としている。これまでの2年間から得られた研究結果から、生殖医療技術を実施する際に避けることの出来ない急激な温度変化や、胚保存などの環境および技術上生じる物理的負荷といった外的な環境要因は、次世代の個体発生や学習機能には影響を与えないことが分かった。その一方で、胚と遺伝的背景が異なる系統由来の母体(レシピエント)への胚移植は、THAラットの学習能力に対し影響を及ぼすことが認められた。最終年度は、異系統のレシピエントから生まれた仔への影響は、さらに次世代まで引き継がれるのかを検討するため、代理懐胎で生まれた仔を自然交配させF1を得た。その結果、代理懐胎で出生した仔の学習成績に関わらず、自然交配により得られたF1の学習成績は、通常のTHAラットが示す学習能力とほぼ同等であった。このことから、代理懐胎による学習への影響は、自然交配を経ることで消失することが分かった。また、F1同士の交配実験において、自然交配によるTHAラットの出生率と同程度F2を得ることを確認出来たことから、代理出産による次世代の生殖能力へ与える影響は少ないものと考えられた。現在は、母子間相互作用において、飼養(子育て)環境が与える影響を検討するため、出生直後から里親を交換し、離乳時までの里親の学習能力がこの学習能力に与える影響評価について検討を進めている。全ての解析項目が終了したわけではないが、代理懐胎による学習への影響と比較し、飼養者の違いによる影響は少ないことが示唆される結果を得ている。実験条件などをさらに統一し、実験結果を積み重ねることを含め引き続き詳細な検討を行っている。
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Biochem Biophys Res Commun.
巻: 22;489(2) ページ: 211-216
10.1016/j.bbrc.2017.05.133.
http://health.med.u-tokai.ac.jp/index.html