研究課題
自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorders: ASD)では、聴覚情報処理の非定型性(過敏・鈍麻)が社会適応に大きく影響することが知られているが、聴覚情報処理特性と聴覚環境(音環境)の変化が、ASDの特性の強い生徒の学校メンタルヘルスにどのような影響を及ぼすかについては、よく知られていない。本研究課題では、児童の問題行動と関連の強いメンタルヘルス項目を抽出した後、ASD児や定型発達(typical development: TD)児においてこれらの項目と聴覚環境を連続調査することで、児童の聴覚情報処理特性に応じて高い学校メンタルヘルスにつながる最適な聴覚環境の同定を行うことを目的とする。自記式質問紙を用いて行った縦断的な生徒のメンタルヘルス調査から、友人関係や学級に対する意欲や被侵害(不適応感やいじめ、冷やかしなどを受けていると感じる程度)は、生徒の自覚的なうつ症状の程度と関連して変動する結果が得られた。TDの子どもでは80dB程度の音圧で聴覚性驚愕反射を認めるのに対し、聴覚過敏を有するASDでは65dB程度の音圧でも聴覚性瞬目反射を認め、不快に感じることが知られているが、騒音計を用いた教室内における音環境調査では、授業中は概ね65‐80 dB 程度で、活動内容によっては、80~90 dB程度に増大することがわかり、聴覚過敏性の高い生徒にとっては日常的に負担が大きい可能性が考えられた。生徒の聴覚過敏特性を把握した上で、生徒のうつ症状の程度や室内の音環境レベルを定期的にモニタリングすることで、生徒の特性に応じた合理的な配慮につながる可能性が考えられた。
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Schizophrenia Research
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10.1016/j.schres.2017.05.034
東京精神医学会誌
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