研究実績の概要 |
これまでのコホート研究で、父親が育児参加をより積極的にしている場合、1歳半にいたるまでの1年間に発生する事故が約10%、特に子どもと散歩をしている場合には25%、予防していることを実証的に明らかにしてきた(Fujiwaraetal,2010)。しかしながら、未知の交絡因子が影響している可能性もありその因果関係は定かでない。それを検証するには、父親の育児参加を促す介入で子どもの事故が予防できるか、を検証する必要がある。よって本研究の目的は、父親の育児参加によって乳幼児の事故を予防できるかどうかをランダム化比較試験により検証することである。 方法は、2つの産科で生まれた子どもの両親を対象に、ランダムに父親の育児参加を促すDVDとそれとは無関係のDVDを配布し、生後18か月まで追跡し事故の状況を質問紙および医療機関との連携で把握することで父親の育児参加の子どもの事故予防効果を検証した。 最終的に、548 世帯の参加を得た。父親の育児参加を促すDVD を視聴させた介入群は、対照群に比べて平日における子どもと過ごす時間が長かった(107.3 分 vs 91.5 分、片側検定でp=0.049)。休日の子どもと過ごす時間に差はなかった。また、事故の発生割合は介入群で20.9%、対照群で17.4%であり、統計的に有意な違いはなかった(p=0.36)。 本研究の結果から、介入に用いたDVD は平日における父親の育児参加の時間を長くする効果があることが分かった。産後すぐにDVD を視聴させるだけで父親の育児参加を促すことをランダム化比較試験で示すことができたことは意義のあることだろう。
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