研究実績の概要 |
計画通り3種のベクター(pUARA2, pUSA2, pAdeA2)を用いて、麹菌Aspergillus oryzae NSAR1株を宿主として、P450発現ライブラリーの調製を行った。Penitrem生合成系で見出された水酸化(PtmJ)、エポキシ化(PtmL)、環拡大(PtmK)を触媒する酵素遺伝子を一つのベクターに組込んだ。同様にaflatrem生合成に関与する、メチル基の酸化的脱離およびアリル位酸化の5段階を触媒するAtmPおよび二箇所の縮環位の酸化を行うAtmQ導入ベクターなど、「Bet2 (betaenone), PbP450-1/PbP450-2 (aphidicolin), CntC (cinatrin), Sol6 (solanapyrone), CcsD (cytochalasin)」合計12個の遺伝子を組込んだ形質転換株ライブラリーを作成した。
新規変換反応を検討するためのライブラリー構築と並行して、ophioblolinの水酸化反応を検討した。Ophioblolinの生産が確認された菌株Bipolaris maydes, Emericella variecolor由来のチトクロームP450水酸化酵素OblB-Bm/OblB-Evの場合、トランスポーターOblD-Ac存在下でのみ、4段階の酸化生成物であるophioblolin Cを生産するのを見出した。これに対しophioblolinの非生産株と言われてながら、ophioblolinの生合成遺伝子クラスターを持つAspergillus clavatus由来の相同性の高いP450 OblB-Acの場合, トランスポーターOblD-Ac非存在下で前駆体を投与することにより、4種の異常生成物を与えた。このように相同性の高い酵素間で酸化する位置が異なるのは、大変興味深い結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画したライブラリー構築は順調で、このほか新たに特徴的な反応を触媒するP450遺伝子「Nf-P450 (sesterfisherol), UstC (ustiloxin), SpdJ (sespendol), JanP/JanQ (shearinine), AsolA/AsolB (didymellamide), HirJ (hirsutellone), PlmB/PlmC/PlmD (pleuromutilin)」など合計10種を発見し、その機能を解析し、ライブラリーに加えることができるなど、順調に計画は進行している。
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