膜を介する情報の人為的制御やセンシングなどを目的として、これまでに様々な人工イオンチャネルの創出が試みられている。申請者は、イオンチャネル形成ペプチド「アラメチシン」のC末端側に、膜外配列ペプチドとして「Fe3+により構造変化するロイシンジッパーペプチド」や「Ca2結合タンパク質カルモジュリン由来ペプチド」を連結したハイブリッドチャネルの構築を報告している。これらのチャネルでは、リガンド添加により誘起される膜外配列のコンホメーション変化が、アラメチシンの会合状態に影響を及ぼし、結果的にチャネル電流の増加を誘導することを示している。この結果は、リガンドと結合して構造変化する適当なペプチド配列を「膜外配列」に用いることにより、様々なオーダーメードの人工チャネル・センサー分子が創出できることを示唆する。本研究では、多様なリガンドに対応できるオーダーメードセンサーへの展開を視野に、リガンドとの結合によりコンホメーション変化する核酸アプタマーを膜外領域にもつアラメチシンチャネルの構築を行うことを目的とした。アルキンを導入したアラメチシンペプチドフラグメント、アジドを導入した核酸フラグメントの調製を行った後、クリック反応によるアラメチシン-核酸ハイブリッドを調製した。このハイブリッド分子は脂質二重膜中でイオンチャネルを形成しうることが分かった。しかし、ハイブリッド化アラメチシンは脂質膜を不安定化することがわかり、安定なチャネル記録を得ることは難しかった。また、核酸部分の構造変化によるチャネル電流の変化は顕著とは言えず、今後の設計の見直しが必要であることが分かった。
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