研究課題/領域番号 |
15K12747
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小野田 晃 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60366424)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 細胞分裂 / 活性発現の分子機構 / タンパク質集合体 |
研究実績の概要 |
本研究は、FtsZ タンパク質集合体が作り出す膜分断の『力』の発生原理の解明を目指す。細胞分裂を制御する FtsZ タンパク質集合体の動的構造変化を、超分子リクルート技術により変調可能な系を創製し、溶液中における集合化挙動を AFM により明らかにする。次に、FtsZ タンパク質集合体をリポソーム二重膜上にアンカリングして、超分子リクルートが FtsZ の集合化挙動とリポソーム二重膜のダイナミックな構造変化に及ぼす効果を明らかにする。 本年度は、超分子リクルート技術のための FtsZ 集合体の調製と溶液状態における集合体の構造解析を実施した。FtsZ タンパク質集合体を外部因子による超分子相互作用により変調可能なタンパク質ユニットを作製し、変調による構造変化を基板上での原子間力顕微鏡観察により評価を行った。まず、E. coli 由来 FtsZ (366残基) のC 末端に脂質二重膜へのアンカリング可能な両親媒性ヘリックスペプチドをフュージョンした。また、Strep タグペプチドを N 末端に導入し、ストレプトアビジンとの相互作用部位を有するFtsZを調製、精製した。まず、FtsZ の溶液状態における集合体形成と安定性について、分子論的な知見を得るために、原子間力顕微鏡によりタンパク質集合体構造を溶液中で直接観察を実施した。ストレプトアビジンを添加した際の影響を濃度を変えて調べ、直鎖構造や湾曲構造の曲率に与える影響を詳細に解析を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、FtsZ 集合体の調製や生化学的評価など計画を遂行した。特に、調製したタンパク質集合体の構造変調を通常の原子間力顕微鏡に加えて、高速原子間力顕微鏡での観察にも成功しており、ストレプトアビジンがFtsZ集合体のバンドルにまたがる形態で、相互作用することが明らかにすることに成功しており、当初計画以上に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、リポソーム二重膜における FtsZ 集合体の形成と超分子相互作用による動的秩序の変調を重点的に、研究を遂行する。FtsZ 集合体構造への超分子相互作用による変調の静的構造に関するこれまで知見を踏まえ、FtsZ 集合体をリポソーム二重膜に固定化し、蛍光顕微鏡により膜上での動的秩序への変調を明らかにする。ジオレイルホスファチジルグリセロール DOPG とホスファチジルコリンを混合したリポソームを調製後、リポソーム二重膜へFtsZ を固定化する。リポソームには蛍光ラベルした脂質を加えて可視化できるようにして、蛍光顕微鏡によりFtsZ タンパク質集合体の構造を時間変化を観察する。膜上での湾曲構造やリング状構造の形成が期待されるので、その構造的な摂動を追跡する。また、マイクロフルイディクスを利用した時空間プログラミングによる FtsZ 集合体の機能解明にも着手する。マイクロフルイディクスの手法を取り入れて、FtsZ 集合体をリポソーム膜の内側に選択的に固定化し、また、リポソームのサイズ、構造、に加えてリポソーム内の含まれるタンパク質濃度を均質にした系において、膜構造のダイナミクスを評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
目的とするタンパク質とその変異体を複数作製し、研究を進める予定であったが、最初に設計調製したタンパク質の機能解析および構造解析で極めて重要な知見が得られたため、その他の変異体の調製を当初の予定よりも繰り下げて研究を進めた。したがって、当初予定した物品費の使用を次年度に繰越すこととなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
当初予定していた変異体タンパク質を調製し、機能解析および集合構造解析を、予定を繰り下げて研究を進める。
|