研究課題/領域番号 |
15K12750
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
酒井 隆一 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 教授 (20265721)
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研究分担者 |
及川 雅人 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 教授 (70273571)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | レクチン / 結晶構造解析 / 低分子プローブ / 構造決定 |
研究実績の概要 |
本研究ではレクチンと糖が強く結合することに着目し、糖プローブに結合させた小分子の構造をレクチンと共結晶させた複合体のX-線結晶構造解析を行うことで決定しようとするものである。本年度はまずレクチンとして海綿より得られたガレクチンCchGの発現を行った。その結果、大腸菌による発現系でCChGを大量に得ることに成功し、リコンビナントCchGがは天然物と同等の活性を示すことを確認した。CchGはラクトースと強い親和性を示すので、ラクトースベースとしたプローブ分子の設計と合成を行った。まず、ラクトースの還元末端にアミノ基を導入し、1-アミノラクトースを得、これに1,3-ジニトロ、4,6-ジフルオロベンゼンを反応させ(5-fluoro-2,4-dinitrophenyl)aminolactoside(FDAL)を得た。次にFDALの反応性を調べるため、アラニン、リジン、トリプトファンをそれぞれ炭酸ナトリウム存在下で反応させたところベンゼン環の5位にアミノ基の導入が確認された。しかしリジンの場合は側鎖のアミノ酸の反応も確認され2種の生成物が得られた。ピリジンを触媒として用いたところ、ピリジンがFDALに結合した化合物が得られた。FDAL-アラニンはCchGによる血球凝集を阻害したので、FDALと低分子の反応はレクチンとの親和性に大きく影響しないことが示唆され、これらの結果よりFDALは本研究に用いる糖プローブとして有用であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、リコンビナントレクチンの発現、精製を予定通り終えたほか、プローブの合成も終了し、3種のアミノ酸をそれぞれ効率よく結合することも確認している。従ってここまでの研究は計画通りに進んでいるが、作成されたプローブとレクチンの結合性を数値的に評価すること、さらには結晶構造解析を行うという課題が残る。また、アミノ基以外の官能基と反応性を示すプローブの合成も必要である。これらは2年目以降に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在プローブとレクチンの結合性を評価する為、等温カロリメトリーによる数値化を実施している。今年度は、作成されたレクチンとプローブの構造解析を進める工程で目標を達成するとともに、アミノ基以外の官能基との反応性を持つプローブのデザインおよび合成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
糖プローブ合成の試薬、溶媒・器具そして反応生成物の機器分析等に費用を計上したが、予想以上に反応が効率よく行われたため試行錯誤による消費が抑えられたこと、さらに部局内にNMRと質量分析装置が導入されたため、測定費用が必要なくなったため費用が抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、X-線構造解析を行い本研究のコンセプトの立証を行うほか、レクチンの種類の新規プローブの合成へと発展させる予定である。従って研究費は主に消耗品(試薬、器具、クロマトグラフィー用品)、旅費(研究成果発表)、その他(論文執筆および投稿)に使用する予定である。
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