研究課題/領域番号 |
15K12751
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
阿部 洋 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80415067)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グルタチオントランスフェラーゼ / 蛍光 / グルタチオン / プローブ |
研究実績の概要 |
グルタチオントランスフェラーゼ (GST)には、基質が結合するH部位とグルタチオン (GSH)が結合するG部位が存在する。GSTは異物排出機構として働くことから、H部位における基質特異性は低い。そこで、いまだ報告のないG部位に結合する分子プローブを設計し、癌細胞で高発現するGSTπを高選択的に検出できる蛍光プローブの開発を試みた。 まず、GSTのG部位に結合する分子プローブの合成を行った。合成したプローブの基本骨格は、GSH (γGln-Cys-Gly) であり、Cysのチオール基をスルホンリンカーに変換した。さらにカーボネートあるいはカルバメートを介して蛍光化合物であるクマリン誘導体を結合させた。このリンカー構造は、GSTのTyr残基のプロトン引き抜き作用によりβ脱離反応を引き起こし、遊離した蛍光化合物が蛍光を発すると予測した。しかし、合成したプローブはいずれも水溶液中で不安定であり、GST非存在下で蛍光を発する結果となった。 そこで次に安定性向上のため脱離基を変換し、また、GSTとの反応追跡を簡便にするため、蛍光化合物に代えて4-ニトロアニリン誘導体を用いて合成し、GSTとの反応性を評価した。具体的には上述のスルホンリンカーに対してエステルあるいはエーテルを介して4-ニトロアニリン誘導体を結合させた。合成したプローブのうち、脱離基がエステルの場合には水溶液中で容易に加水分解を受けた一方、エーテルの場合は全く反応しなかった。また、これらの合成プローブとGSHとの競合阻害実験の結果から、プローブがGSTのG部位に結合することは明らかである。従って今後はリンカー長や脱離基を種々検討することで目的とするGSHを基本骨格とした蛍光プローブを合成できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
設計した分子が予想外に不安定であったことから、プローブの構造を最適化する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、複数のプローブを作成し、その性質の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の発注が間に合わなかっため、10万円程残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越金は、新年度に消耗品を発注するのに使用する予定である。
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