研究課題
本研究では、ラベル支援レーザー脱離イオン化質量分析法(LA-LDI MS)を用いて、標的タンパク質の光ラベル化反応と酵素消化という2つの操作だけで、プローブと結合した断片ペプチドを選択的かつ高効率に検出できる光親和性プローブを創出し、新たな結合位置解析法を開発することを目指した。昨年までに開発したLA-LDI MSに適した蛍光タグである6-アミドピレン基と、光反応基であるジアジリン基を抗腫瘍性リガンドであるアプリロニンAに導入した誘導体を合成した。本プローブは天然物の強力な活性を保持しており、メタノールや水中で紫外光を照射することで、40%以上という高い収率で溶媒分子と共有結合し、365 nmに強い吸収を持つアミドピレン基の存在下でも、光反応基が機能することを確認した。しかし、このプローブを標的タンパク質アクチンと実際に結合させて光反応を行ってもラベル化タンパク質は得られず、プローブは主に標的タンパク質内部に取り込まれている水分子と反応したことが分かった(Org Biomol Chem誌に発表、2016年)。そこで反応性官能基をN-ヒドロキシスクシニル(NHS)基に変更したアプリロニンAのアミドピレンプローブを合成し、ラベル化と酵素消化を検討したところ、アクチンの定量的なラベル化とラベル化ペプチドのLA-LDI MSによる高感度検出に成功した。現在、NHS基をリガンドとアミドピレン基の間に挿入したリガンド解離型プローブの合成、および標的分子の効率的なラベル化について検討を行っている。さらに、アプリロニンAが誘導するアクチン・チューブリン間のタンパク質間相互作用については、ゲルろ過HPLC分析と表面プラズモン共鳴による解析により、タンパク質-リガンド間の結合解離定数を明らかにした(Bioorg Med Chem誌に発表、2016年)。
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