研究実績の概要 |
本研究では、研究代表者らが近年開発した無細胞翻訳系を用いたリポソーム内膜タンパク質合成技術(Fujii, Matsuura et al., PNAS, 2013; Fujii, Matsuura et al., Nat Protoc, 2014)を応用し、大腸菌由来の多剤排出トランスポーターEmrEの基質輸送活性を阻害するペプチドの創出を目指す。ここではEmrEを標的とするが、本研究を遂行することで実験系が確立できれば、様々な膜タンパク質の阻害剤開発にも応用可能である。 阻害ペプチドの作用様式には2通りが考えられる。1)EmrEの機能を直接阻害する方法と、2)EmrEがホモダイマーを形成することを利用し会合を阻害する方法である。本年度は、会合阻害ペプチドをスクリーニングする技術の開発に着手した。具体的には、EmrEと会合することでEmrEの輸送活性を低下させる配列Xと会合しても活性に影響を与えない配列Yの2種類を用意した。そのために、XとYの候補を過去の論文を調査することで複数デザインし、実験により適切な配列を選定した。 次に、この二つのペプチドをコードするDNAを混合し、阻害活性の高いXをコードする遺伝子が選択的に濃縮する実験系の確立を目指した。具体的には、リポソーム内に再構成型無細胞翻訳系PUREsystem、EmrEをコードするRNAとペプチドをコードするDNA1分子を封入し、タンパク質合成反応を行った。その後EmrEの基質である蛍光物質EtBrを加え、リポソーム内部のEtBr蛍光強度の低いリポソームをセルソーターにより分取した。現在までのところペプチドXをコードするDNAを濃縮できるところまでは至っていない。
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