化合物の標的や、作用機序に関連するシグナル経路を同定する方法として、動物培養細胞でのshRNAライブラリーを用いた網羅的RNAiによって遺伝学的に調べることは非常に有効である。今年度は、標的既知あるいは標的未知で、細胞増殖に影響を与える計5つの化合物についてshRNAライブライリースクリーニングを行った。 スクリーニングにはHeLa S3細胞を用いた。まず細胞にレンチウイルスshRNAライブラリーを導入して、ノックダウン細胞のプールを作成した。この細胞プールを複数に分け、一つのサブプールはコントロールとして化合物未処理のままで培養を続けた。他のサブプールにはそれぞれ化合物を添加し、一週間から10日間の培養を行った。各細胞群のDNAからshRNA遺伝子領域を増幅し、配列解析によって各shRNAを持つ細胞の頻度を決定した。コントロール細胞群での頻度との比較により、化合物感受性に差をもたらすshRNAを同定した。これに基づき、ノックダウンすると化合物感受性を上昇させる遺伝子のリストと、ノックダウンすると感受性を低下させる遺伝子のリストを作成した。 スクリーニングを行った化合物のうち、標的既知化合物のひとつでは、作用機序に関わるパスウエイ上の遺伝子群が、ノックダウンすると化合物感受性を上昇させる遺伝子リスト中に濃縮された。また、別の標的既知化合物では、標的からは予想されなかったパスウエイの遺伝子群が、ノックダウンすると化合物感受性を上昇させる遺伝子リスト中に濃縮されていた。
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