研究課題
親の世代のエピゲノム変化がどのように次世代に伝わるのかは、きわめてホットな研究領域となりつつある。我々はこれまでに、父の加齢が仔マウスの行動に影響を与えることを見出しており、例えば神経発生に重要な遺伝子であるPax6の変異を父から受け継いだ場合、父が若齢か高齢化によって、表現型が異なることを報告した。このような次世代に継承されるエピゲノム変化の分子メカニズムを探索するため、野生型マウス雄生殖細胞、すなわちDNAのメチル化に着目して研究を行った。研究昨年度に実施した精子DNAメチル化の全ゲノム解析 (WGBS) により得られた結果では、精子ゲノムのマッピング効率が4割程度にとどまることが明らかとなり、以後の解析の信頼性に問題があった。そこで本年度は、精子ゲノムのCpG領域を選択的に濃縮した後に包括的なDNAメチル化解析を行うことにより、高齢由来の精子において変化するDNAメチル化領域を効率的に検出する手法を試みた。その結果、従来法の100分の1の総リードで、1x以上のカバレッジでは8割程度、10x以上のカバレッジでは5割程度のマッピング効率となり、大幅な改善が認められた。精子ゲノム全体でのメチル化レベルは若齢精子 (4検体) では33.3%-34.6%、高齢精子 (9検体) では27.7%-36.2%となり両群間で同等であった。MOABSを用いて高齢精子において有意に変化しているDANメチル化領域 (differentially methylated regions; DMRs) を探索したところ、約100のゲノム領域がDMRsとして検出された。興味深いことに、これらのDMRsの近傍に存在する遺伝子のGOを解析したところ、学習や神経機能に関与するものが有意に濃縮されていることが明らかとなった。また、モチーフ解析によりDMRsにはREST結合配列が濃縮していることが見出されたことに加え、ChIP-seqデータベース (ChIP-Atlas) を用いた検索からもDMRsに結合する候補分子としてRESTが最上位にリストされた。
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PLoS One
巻: 11 ページ: e0166665
10.1371/journal.pone.0166665
http://www.med.tohoku.ac.jp/news/3310.html