長期的な「記憶」は、我々が自身のアイデンティティを保つために不可欠である。ところが、長期記憶の細胞生理学的な基盤に切り込んだ研究は、未だにほとんどない。急性脳スライス標本を用いて実験のできる、ごく短い時間制限内で生じる長期増強・抑制過程は、その後、数時間かけて生じる超長期可塑性過程とは、質的に全く異なるものである可能性が高い。本研究では、生きたままの動物を使い、光照射領域の多くのシナプスに一気にシナプス可塑性を引き起こすというモデル実験系を立ち上げた。小脳虫部領域では、ほぼ非侵襲的に光刺激・神経活動記録ができる。この利点を活かし、超長期可塑性に関わる基本原理を解明していくことを目指した。
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