前頭前野や大脳基底核には、視覚的注意に関係した多くの領域が存在し、相互に結合することによって複雑なネットワークを形成している。特に近年、大脳基底核の重要な構成要素であるドーパミンニューロンと前頭前野を結ぶ神経回路が、視覚的注意にとって重要であることが報告された。本研究では、まずドーパミンニューロンが注意に関わるどのようなシグナルを前頭前野に伝達しているのかを明らかにするため、注意を必要とする認知課題をサルにおこなわせ、その際にドーパミンニューロンと前頭前野ニューロンから神経活動を記録・比較した。この課題では、サルが呈示された視覚刺激に注意を向ける条件と向けない条件が設定されている。この視覚刺激は6種類あり、それぞれ異なる報酬価値に対応している。神経活動を記録した結果、サルが注意を向ける条件においてのみ、ドーパミンニューロンは視覚刺激の報酬価値の情報をコードしていた。注意を向けない条件では報酬価値の情報をコードしていなかった。一方、前頭前野から記録したニューロンでは、注意を向ける条件の方がより強く価値情報をコードしていたが、注意を向けない条件でも弱くではあるが価値情報をコードしていた。つまり、ドーパミンニューロンにおいて注意の影響がより強く見られたことになる。本研究計画は平成28年度で終了になるが、この成果をさらに発展させ、ドーパミンニューロンから前頭前野に伝達される神経シグナルと視覚的注意との因果関係を調べる光遺伝学実験をおこなっていく。
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