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2015 年度 実施状況報告書

情動の概日変動メカニズムと情動障害改善の試み

研究課題

研究課題/領域番号 15K12767
研究機関東京大学

研究代表者

清水 貴美子  東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50451828)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード情動 / 不安様行動 / 概日時計 / SCOP / サーカディアンリズム
研究実績の概要

これまでに、マウスの不安様行動が概日変動する事を見いだしていたが、本研究では、概日時計とSCOPを手がかりとして、不安様行動が日周変動するメカニズムの解明を目指している。前脳特異的時計破壊マウスと 前脳特異的 Scop ノックアウト(Scop CKO)マウスを作成し、視交叉上核の中枢時計には影響させることなく、情動に対する時計システムの効果を評価した。前脳特異的時計破壊マウスでも、Scop CKOマウスでも、不安様行動の概日変動は見られなくなった。ただし、前脳特異的時計破壊マウスでは不安が高い状態で、Scop CKOマウスでは不安が低い状態で一定になっていた。この両者の違いを解明するため、前脳特異的時計破壊マウスの扁桃体におけるScop mRNA発現量を測定したところ、時計を止めた事により、Scopの発現量が高く維持されている事を明らかにした。前脳において、概日時計によってコントロールされるSCOPの発現量の違いにより、不安様行動の概日変動が作られることが示唆された。また、Cre発現アデノ随伴ウイルス (Cre-AAV)をScop floxマウスの脳内局所に投与し、Scopをノックアウトする事により、不安様行動の概日変動を作り出す脳部位をピンポイントで明らかにしようとしている。細胞への感染が確認できるようにCreとeGFPの融合蛋白質として発現させる。これまでに、Cre-AAVが神経細胞に感染する事、CreによるloxPの組換えが起こる事を培養細胞と初代培養神経細胞を用いて確認した。さらに、マウスの扁桃体特異的に Cre-AAV を感染させる事にも成功した。現在、不安様行動を測定中である。これまでのところ、扁桃体特異的Scopノックアウトにより不安様行動の概日変動が無くなり、不安様行動が低い時刻の値で一定になる傾向が見られている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の予定通り、前脳特異的時計破壊マウスの作製に成功した。このマウスを用いて不安様行動を評価する行動テストをおこなったところ、不安様行動の概日変動が見られず、不安が高い時刻の値で一定になった。一方、前脳特異的Scop cKO マウスでも不安様行動の概日変動は見られなくなったが、前脳特異的時計破壊マウスとは異なり、不安様行動が低い時刻の値で一定になった。この理由を解明するため、Scop mRNA 量を検討したところ、前脳特異的時計破壊マウスではScop mRNA 発現量が亢進がみられ、扁桃体のScop の量依存的に、不安様の強さが決まるという、新しい知見が得られた。また、当初の予定では、Cre 発現AAV の作成までを H27 年度に行う予定であったが、作成した AAV の機能評価を終え、さらに、マウスに投与し、扁桃体特異的にAAV を感染させる事にも成功している。

今後の研究の推進方策

昨年度までに、AAV を用いた扁桃体特異的 Scop ノックアウトマウスの作成に成功し、不安様行動の測定を開始しているが、この測定をより多くのマウスを使って、異なる時刻に測定する必要がある。また、扁桃体は大きく分けてBLAとCeA とに分けられるが、これらを区別してノックアウトする事により、正確な場所に対する機能を特定したい。充分な匹数になるまで不安様行動の測定をおこない、扁桃体のScop 量の変動が不安様行動の強さを決定する事を示したい。
さらに、SCOP は ERK1/2 の活性化やAkt1/2/3 の脱リン酸化等に関わっているが、これらのどの分子を介して不安様行動の表出に関わるのかを明らかにする。ERK を介している場合、CREB による転写をコントロールしている可能性を、また、Scop がAkt に関わっていた場合には、その下流で働く分子の解明を目指す。特に、GSK3β や β-Catenin などの情動と関連する事が知られている分子との繋がりを中心に検討する。

次年度使用額が生じた理由

予定していたよりも、AAV の作成とその機能性の確認が順調に進んだため、培養細胞の維持に関わる試薬やマウスの飼育に必要な経費を抑える事ができた。

次年度使用額の使用計画

扁桃体特異的SCOPノックアウトマウスの不安様行動を、より正確に検出するため、マウスの匹数を増やして、AAV 投与と行動実験を充分に行いたい。このためのマウス維持費等に使用する。また、扁桃体において、SCOP の下流で機能する分子を特定するために、いくつかの分子の抗体を購入するために使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2015

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] SCOP/PHLPP1β in the forebrain regulates circadian output of mouse affective behavior2015

    • 著者名/発表者名
      中野純、清水貴美子、深田吉孝
    • 学会等名
      第22回時間生物学会学術大会
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      2015-11-22

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公開日: 2017-01-06  

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