研究実績の概要 |
線虫C. elegansにおいてglr-1遺伝子発現神経細胞群をチャネルロドプシン(ChR2::yfp)を用いて光遺伝学的に人工的に活性化すると持続的後退運動が誘発されることが知られ、後退運動制御機構の点から興味深い。本研究ではこの現象に関わる神経細胞の同定を目指す。nmr-1遺伝子発現神経細胞群の活性化では強い持続的後退が誘発されないことから、glr-1(+)nmr-1(-)細胞群に含まれる12種類の神経細胞(AIB, AVB, AVJ, DVC, PVQ, RIA, RIG, RIS, RMD, RME, SMD, URY)の中から持続的後退に関わる神経細胞の候補を絞る予定である。昨年度からYFP発現を目安として、glr-1p::ChR2::yfpの発現細胞の同定を試みてきた。ところが、私たちの観察ではこの系統でnmr-1::mRFPと同じ細胞でしかYFPシグナルが検出できなかった。このためglr-1p::ChR2::yfp系統と nmr-1p::ChR2::yfp系統とで後退運動の違いが生じたのは、前者が後者より強い遺伝子発現を引き起こすことが原因ではないかと考え、発現細胞ごとの発現強度について検討した。しかし行動解析の結果と発現強度に明確な相関がみられなかった。今年度になって細胞標識法に問題があるのではないかと考え、詳細にYFP発現を観察した結果、細胞質全体でなく細胞内の一部でのみにYFPが存在することが多く、発現細胞が正確に標識できないことが明らかになってきた。このためglr-1p::GFPを細胞質全体にマーカーを発現する系統を新たに作成し直し、この系統を用いて実験を行った。 この結果、nmr-1::mRFP以外の細胞でGFPが検出され、AIB,SMD, RMDを候補として今後さらに解析することになった。
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