研究課題
本研究では(1)ウイルスベクターを用いて導入した霊長類の脳での外来遺伝子の発現状態を生きた状態でモニターする技術、(2)神経細胞軸索終末に発現させた遺伝子を可視化することによる生体神経路トレーサー技術、の2つの技術を確立することを目的とする。そのために、脳内人工受容体の発現を鋭敏に捉える新規PETプローブを開発し、人工受容体の検出感度と検出精度を飛躍的に向上させたイメージング法を確立することを目指す。H28年度は、サル脳にウイルスベクターを用いて発現させた抑制性人工受容体hM4Diを11C-clozapine (CLZ)を用いたPET測定で可視化することに成功し、非侵襲の遺伝子発現可視化技術が確立できた(Nagaiら2016)。人工受容体の検出感度と検出精度を向上することを狙い、CLZの類似化合物からPET薬剤を開発し、サル脳における人工受容体DREDD発現の可視化を試みた。その結果、サルの被殻に発現させたhM4Di領域において、新PET薬剤の高い集積が認められ11C-CLZより約10%増加する一方で、hM4Diを発現しない皮質下領域での集積は約30%低下した。さらに被殻の投射先である淡蒼球や黒質にも集積を認めたことから、軸索終末でのhM4Di発現を検出したと示唆された。今後さらなる特性評価の必要があるものの、新PET薬剤は人工受容体への高い選択性を有し、サル生体脳における発現を鋭敏に捉えうるPETプローブであることが期待でき、PETによる生体神経路トレーサー技術に利用可能性が高いと評価する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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http://www.nirs.qst.go.jp/seika/brain/team/system_09.html