研究課題/領域番号 |
15K12775
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
小池 耕彦 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 特任助教 (30540611)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 二者/三者同時記録fMRI / Hyperscanning fMRI / 会話の神経基盤 |
研究実績の概要 |
会話とは二人以上の個人が異なる役割(話者,聴取者)を交互に担いながら進めていく,共同作業である.二者の場合は話者のターゲットは必ず聴取者であるが,三者以上の場合は話者のターゲットと直接的にならない会話参加者が存在しうるという点で,二者間でのそれとは明らかにことなっている.これらの点を踏まえた上で,本研究では二年間で,(1)二者間での会話を,二者が一つの非線形系として結びついた系として解析する手法を確立し,その際の神経基盤を解明する段階,(2)その系を三者会話へと拡張することで複雑な会話を理解するための段階,という二段階を計画している. 平成27年度は第一段階として,生理学研究所に既存の二者同時記録fMRI装置を利用して,Pickering & Garrod (2004)で用いられた共同作業(迷路)ゲームを参加者におこなってもらい,課題中の二者会話中の脳活動と会話内容を二者から同時に記録した.このデータを解析することで,会話の成立および会話スキルの向上に関連した神経基盤を検討した.その結果,会話ターンの切替のスムーズさによって定義される「会話の上手さ」が課題を繰り返すにつれて上昇すること,またそれに対応して,内側前頭前頭,楔前部,側頭頭頂接合部などからなるデフォルトモードネットワーク,そして小脳の活動が上昇することが明らかになった.この結果については,29th Annual CUNY Conference on Human Sentence Processingでポスター発表をおこなった. この二者会話実験と平行して,平成28年度におこなう三者会話実験に対応するための準備をおこなった.既存の二者同時記録fMRIシステムと別棟にある7テスラMRIの間で駆動制御信号をLAN経由でやり取りするシステムを設置し,三台で同期した脳活動の記録が可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度の研究計画の主な部分である,二者間での自由な会話の神経基盤を解明する実験については,当初の予定通り問題なく進んでいる.会話の上手さを表象する行動指標,およびそれに対応した脳活動を描出することができ,またその内容については国際会議での発表まで漕ぎ着けることができた.二者会話の神経基盤について,その一端を解明することができつつあると考えている. 28年度以降の準備に関しても,ほぼ滞り無く進んでいる.当初計画では,二者同時記録fMRIシステムと同フロアにある頭部専用3テスラMRIを含めて三者同時計測システムを構築する予定であったが,研究施設の方針に従い,別棟にある7テスラMRIとの接続が必要となった.棟をまたいだ接続の場合,光ケーブルなどをを介した物理的な接続をおこなうための配線を留置することが困難なため,LAN経由でTTL信号を転送可能な装置を利用することで三台の同期を実現することができた. 本研究の隘路の一つは,同時に計測された三者の脳活動を一つの非線形系として解析する方法にある.この点について申請者は,独立成分分析(ICA; Independent Component Analysis)を用いた方法および赤池因果性解析の応用を提案していた.ICAについては二者同時計測のデータを利用して予備的な解析をおこなったものの,被験者間でのBOLD信号形状のバラ付きが非常に大きいことに起因して,二者にまたがる独立成分,すなわち二者にまたがるネットワークを検出する能力が,予想以上に低かった.個々人のBOLD信号をそのまま独立成分分析に回すのではなく,解析的に正規化された信号を利用するなど,手法の工夫が必要と思われる.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおり,平成28年度中に三者会話の実験を完了する.本研究には,(1)物理的に離れた位置にある3台のMRIを安全に同期駆動する系の実現,(2)取得された三者の脳活動を適切に解析する手法,といった2点の隘路が存在する. 1点目については,離れた実験棟にあるMRI装置を同期駆動可能なシステムが準備出来たことで,3台のMRI装置内にいる被験者の脳活動を同時計測しつつ会話コミュニケーションをすることに,目処はついた.研究施設の倫理委員会より,複数実験施設にまたがった実験をおこなう際の安全確保講習をおこなうことを要求されたため,講習をおこなった後に実験に入ることとする.その後,予備的な実験として,3台のMRI装置に入った実験参加者に完全に自由な会話をしてもらい,その際の脳活動を記録する.このデータを利用して,3台を同期させたことにともなう画像上のノイズが存在しないことを担保するとともに,7テスラMRIと3テスラMRIで適切なコントラストの画像を撮影できるパラメータを探索する.その後,平成27年度におこなった迷路ゲームを三者に拡張した課題を利用して,三者会話実験をおこなう. 2点目の解析的な隘路については実験と平行して検討を続ける.当初計画にあったICA利用する方法については,最適化された信号を用いたICAをおこなう方法を検討する.さらに個々人の脳を複数の関心領域に分割して,三者の脳からなる領域間ネットワークとして解析する方法(Abe, Koike et al., 2014),もしくは複数被験者の脳活動パタンに注目する方法(Kriegeskorte, 2015)なども,三個体を一つの非線形系として扱う別の手法として,平行して検討を加える.さらに古典的なGLM(General Linear Model)を応用した方法として,三者間の関係性をイベントとして定義し,そのイベントに関連して個々人に起こる脳活動を描出する方法も,あわせて検討したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に計画通り執行したが、所属機関の会計処理上、次年度使用額となったものがある。
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次年度使用額の使用計画 |
すでに納品は済んでいるので、その支払いに充当する。
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