本研究課題は、腹側被蓋野と一次運動野の活動相関を調べ、運動学習中の腹側被蓋野に適切なタイミングで電気刺激を行う介入操作により、学習効果に改善が見られるかどうかを検証することを目的とする。腹側被蓋野に電気刺激用電極を留置し、運動学習課題のトレーニングを行った。本年度はリーチングによるエサ取り運動学習課題に加え、より簡便な水平ラダー歩行学習課題を導入した。歩行学習ではラング間隔を毎日変更し、10分間の歩行中にステップを踏み外す動作をビデオ撮影し、ラダー歩行の運動パフォーマンスについて解析を行った。踏み外し動作は3段階(0:Total miss/1:Deep Slip/2:Light Slip)で評価し、歩行運動パフォーマンスのスコアを計算した。腹側被蓋野への電気刺激は歩行運動中に0.2Hzで与えた(単一パルス:Duration 0.6ms、Biphasic 50%、Current0.3mA)。その結果、運動学習中に電気刺激を与えた群では5日間の運動学習期間にわたり、運動パフォーマンスのスコア向上が見られた。また、電気刺激群は、非刺激群に対し常に高スコアの運動パフォーマンスを示し、腹側被蓋野への電気刺激が歩行運動学習に有効に作用していることが示唆された。さらに、脳刺激の他候補部位であるマイネルト基底核に電気刺激を与える実験を試みた。膜電位イメージング法を用いた解析の結果、マイネルト基底核の後方部位への電気刺激により、腹側被蓋野の場合と同様、運動野皮質領野に興奮性の神経活動を惹起できることが明らかとなり、マイネルト基底核が新たな運動機能調節ターゲットとなり得る可能性が示唆された。本研究の中では、運動野皮質を局所的に破壊するために紫外線を利用する新しい手法を開発し特許出願を行った。
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