本研究が焦点をあてるソ連の組織オソアヴィアヒムとなる様々な組織は1920年代から徐々に形成されていたがそれらが統合された、1927年にこの組織が成立した。1930年代に入り、日本による満洲事変と満洲国の設立(1932年)、ヒトラーのナチスドイツの権力獲得(1933年)という反共国家が東西に誕生したことにより、ソ連の国際環境は悪化、スターリンらソ連指導部は本格的な対ソ攻撃を懸念するようになる。したがって軍隊の強化や軍備の充実だけでなく、将来的に赤軍兵士となりうる若年層に対する軍事知識の早期注入、女性や徴兵年齢を過ぎた壮年層をも巻き込んだ国民の全階層に対して、戦争に対する備えを怠らないようにとの周知徹底、銃やパラシュート降下の訓練施設などの整備を広範に進めることになった。 2017年度は、引き続き本組織に関係した書籍や学位論文の分析を行うとともに、ソ連共産党中央委員会政治局でおこなわれたオソアヴィアヒムに関する決定を1920年代以降、1939年までの時期について網羅的にチェックし、時系列的にどのように組織的な発展を遂げて行ったのか全体像を把握することができた。当局の関心の高さを再確認できた。モスクワのロシア国立連邦公文書館(GARF)のオソアヴィアヒム・フォンドでの史料収集と分析を行い、極東のハバロフスク、ウラジオストックの公文書館でも追加的に史料を収集することができた。軍の機関紙『赤い星』のマイクロフィルムの分析も並行して実行しており、論文執筆を準備しているところである。
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