本年の調査研究により、3つの成果が上がった。1つ目は、研究フレ-ムワークとして、イノベーション・システム理論とグローバル・バリュー・チェーン(GVC)研究を統合させたことである。前者は途上国の内発的発展の基礎を理解するためには大変有効ではあるが、グローバルな視点がない。一方、後者はイノベーションの形態をより多面的に捉えている点では大変有益であるが、グローバル経済に途上国が参入した場合、どのように発展するのか、という分析に欠けている。途上国がGVCに参入することで学習の機会がどのように担保されるのか、という視点(イノベーション・システム論とGVC研究の融合)を取り入れ、研究に組み込むことができたことが第1の成果である。 第2の成果は、ミャンマーの伝統産業である漆器産業や手織物産業の実態調査を、上記の2つの理論の融合バージョンをフレームワークとして使用することによって、より深めたことである。その結果、大都市圏でないためフォーマルな形での輸出が困難な途上国内の地域でも、ツーリズムが間接的にそれら途上国地域をGVCに組み入れることができる手段となりうることを見出した。かつ、ツーリズムがそれら地域の発展に繋がっているのは単に製品に対する需要が増えたからではない。ツーリズムを通して、様々な学習の機会とイノベーションが創出されうるからである。 第3の成果は、“Role of Tourism in Promoting Indigenous Craft Industries and Achieving Sustainable Development Goals (SDGs) --- The Case of Myanmar”と題した英語論文の執筆と2018年度8月に開催される国際会議への論文概要の投稿を行ったことである。
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